ショッピングセンターに奪われた若年層・ファミリー層
百貨店の市場規模は90年代以降、継続的な縮小が続きましたが、その最大の背景としては若年層やファミリー層などの需要が、百貨店以外の商業施設に分散したのだと考えられます。他にも、正確なデータはありませんが、中元歳暮の長期的な需要縮小、外商顧客の高齢化による需要縮小などの影響も大きいといわれています。
昭和の時代には百貨店とは休日に家族で行って一日かけて時間を過ごす場所でした。そのため、買物をしているお母さんを待っている間、お父さんと子どもが時間をつぶすための遊園地が屋上にあり、一家そろって最上階の大食堂でランチをする、というのが一般的な昭和の百貨店の姿でした。
現在は、若い層向けには、ECサイトがあり、友人と時間を過ごすのであれば、さまざまなショッピングセンターやファッションビルがあります。そうなると百貨店の顧客層は昭和のユーザーであったシニア層ばかりとなり、新陳代謝が行われなくなったまま、時間の経過と共に急速にアクティブな顧客が減っていくという危機的な状況にあるということになります。
インバウンドと富裕層への依存が高まる
図表3に見る通り、百貨店売上が着実に落ちていくのに対して、ファミリー層、若年層の消費者が分散したとされるショッピングセンターの売上は2000年代以降、着実に伸びていることが見て取れます。
特にファミリー層の休日の「時間消費」に選ばれているのは郊外の大型ショッピングセンターになりました。かつて、大型ショッピングセンターは出店余地のある地方が中心でしたが、2000年代以降は、大都市郊外や周辺部の大規模工場跡地が再開発され、都会の消費者にも身近な存在になりました。例えば、川崎駅前のラゾーナ川崎(2023年売上920億円)、大阪駅前のルクア大阪(同1037億円)など大都市近場に百貨店の基幹店クラスの売上規模を持つショッピングセンターがたくさんできています。
百貨店はこうした顧客層の新陳代謝を事実上あきらめ、大都市中心部ならではのインバウンド需要取り込みに大きくシフトしました。コロナ後は、復活したインバウンドと富裕層の余剰資金が高級ブランドや宝飾品へと流入して、大都市の基幹店は好調です。ただ、インバウンドと富裕層への依存を強める百貨店はますます大衆からは離れつつあるのです。
※時間消費
消費の形態としてモノを買って消費するだけではなく、快適な時間を過ごすことに対してお金を払うという消費のやり方。



