江戸時代創業の老舗「呉服系百貨店」

百貨店は、その出自をみると、江戸時代からの老舗呉服商から転換した呉服系百貨店と、鉄道会社がターミナル駅の利用客へのサービス向上のために作った電鉄系百貨店の2類型に大別されます。

大手百貨店は今でこそ、三越伊勢丹、高島屋、エイチ・ツー・ オーリテイリング、J-フロントリテイリング、そごう・西武の5社ですが、かつては多くの企業が存在していました。中でも、呉服系百貨店と呼ばれる、江戸時代の呉服商から発展した百貨店に松坂屋、白木屋(後の東急百貨店)、越後屋(後の三越)、大丸、高島屋、そごう、などがあり歴史ある老舗からの転換組なのです。

その他、地方百貨店の中でも、福岡の岩田屋、仙台の藤崎、岡山の天満屋、甲府の岡島、盛岡の川徳、金沢の大和(だいわ)など、多くの名門地方百貨店も呉服系百貨店にあたります。

百貨店が長きにわたって小売業の名門とされたのは、こうした老舗としての「格の高さ」もあってのことです。呉服系百貨店は、一般的に旧市街の中心市街地に立地し、町全体の集客を担う存在になっていったのです。

大都市でも百貨店が消える未来は近づいている

呉服系とは全く異なる発祥で、立地創造という考え方からできたのが電鉄系百貨店という類型でした。阪急電鉄グループの創始者である小林一三氏が、1920年代に鉄道の始点である梅田駅(現 大阪梅田駅)に作った百貨店は、当時の乗降客数約12万人をベースとした、世界初の鉄道立地の百貨店です。

以降、近鉄、東急、京王などの電鉄会社が駅立地百貨店に参入し、その後、1960年代にかけて、南海と西鉄を除くすべての大手私鉄(南海もなんば駅に高島屋、西鉄も天神駅に福岡三越を誘致している)が百貨店事業に参入するまでになりました。2019年時点の百貨店の店舗別ランキング上位20位も、11店舗を電鉄系または駅ビル誘致組が占めています。

【図表2】「呉服系百貨店」と「電鉄系百貨店」
「呉服系百貨店」と「電鉄系百貨店」(図表=『小売業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』)

一方で、地方に関してはモータリゼーションの進展で、公共交通基盤が衰退したため、駅前立地は消失してしまい、ロードサイド立地に変わっていきました。しかし、東京圏、大阪圏の鉄道ターミナル駅は、その乗降客数を背景に、今でも日本で最も優良な立地であり続けています。

大都市鉄道網が作った世界的にも珍しい鉄道ターミナル立地、そして、その後のモータリゼーションが生み出したロードサイド立地、日本の商業立地はこの二重構造となったのです。しかし、コロナによる大きなダメージを経て電鉄系の風向きも変わりました。ターミナル再開発のタイミングで多くの電鉄系が複合商業施設への建替えを計画しているからです。再開発後に再出店することを表明している電鉄系百貨店は皆無です。大都市でも百貨店が消える未来が近づいています。

※エイチ・ツー・オーリテイリング
阪急阪神百貨店を運営する企業グループの持株会社。

※J-フロントリテイリング
大丸松坂屋百貨店、PARCOを運営する企業グループの持株会社。