別の記事でも論じたが、この「候補者の差し替え」こそが、東京24区の創価学会員に火をつける決定的な要因となった。
そもそも有田氏は、ジャーナリスト時代から公明党や創価学会を厳しく批判してきた人物として知られている。過去には「反創価学会」を掲げるジャーナリストや政治家ともイベントを行うなど、学会員にとっては嫌いになって当然の存在だった。もし有田氏がそのまま24区から出馬していれば、学会票は中道ではなく、別の党に流れていた可能性がある。
八王子市に在住する現役創価学会員の30代男性によると、候補者が有田氏から細貝氏に差し変わった瞬間、地元の空気は一変したという。
「正直、有田さんに投票するのは絶対に無理だと思っていたので、候補者が代わったときは本当にホッとしました。しかも新たに候補者となった細貝さんは八王子出身で、若い候補者です。これで何のわだかまりもなく、全力で応援できる! と喜んでいた学会員はたくさんいましたよ」
「クリーンな政治」という大義とも一致
さらに、対抗馬である萩生田氏の存在も、学会員の闘志に火をつけた。萩生田氏は、2018年から22年までに2728万円もの政治資金収支報告書の不記載があったと報じられており、当時の政策秘書が略式起訴されている、いわゆる「裏金問題」の当事者だ。
そもそも公明党が26年間にわたる自民党との連立を離脱した最大の理由は、自民党の「政治とカネ」の問題に対する不信感だった。そのため、裏金問題の象徴的存在ともいえる萩生田氏を落選させることは、公明党の掲げる「クリーンな政治」という大義名分とも完全に合致する。
「応援しやすい若手候補」と「倒すべき明確な悪役」。この2つの要素が揃ったことで、東京24区の創価学会員は、「戦う意義」を見いだしたのだ。
激戦区を紹介する「聖教新聞の一面」
東京24区が創価学会にとって「注目区」であったことは、現地取材だけではなくほかの要素からも見えてくる。それが聖教新聞の一面だ。
筆者が入手した2月6日付の聖教新聞を見てみると、右端に「創大生が街の中へ 人の中へ」という見出しがある。記事では、創価大学の学生が地域と協働して社会課題に取り組んでいる様子が紹介されている。
この記事は2面まで続いており、八王子北口商店街会長の「若い力で街の“空気”が変わった」というコメントが見出しになっている。そう、この創価大学がある場所がまさに東京24区なのである。
現役創価学会員の40代男性によると、聖教新聞では選挙が近づくとそのときの激戦区に関する池田大作氏のエピソードが紹介されたり、地域の取り組みなどが紹介されることはよくあることだという。聖教新聞で紹介された地域では、LINE等で地元が紹介されたことを喜び合い、集会などで聖教新聞を読み合って決意を新たにするのだという。
非創価学会員からすれば、この記事はただの大学生の活動を紹介した記事でしかないが、創価学会員からすれば激戦区での勝利を誓い合うためのメッセージとして機能しているようだ。

