立憲議員のあいさつにピンと来ない学会員たち

取材した創価学会員によると選挙戦の最中、各地で立憲民主党出身の候補者が創価学会の会合にリモートなどで参加し、あいさつ回りを行っていたという。しかし、そこで語られた言葉が、学会員たちの心に響くことはほとんどなかったようだ。

取材に応じた学会員たちの多くが口にしたのは、候補者たちの「デリカシーのなさ」と「準備不足」だった。

ある選挙区では、立憲出身の候補者が「私の政治の師匠は小沢一郎なんです」と、自身の政治的ルーツを熱心に語ったという。しかし、かつて新進党時代に公明党とたもとを分かち、その後も対立関係にあった小沢一郎氏に対して、好感情を持っている創価学会員は極めて少ない。むしろ敵対心の強い会員もいる中で、悪気なくそのようなエピソードを披露してしまう感性が、現場の空気を冷めさせていた。

これは単なる“失言”ではない。組織票に依存する選挙では、候補者の言葉は「政策」より先に「関係性の確認」として受け取られる。その作法を理解していなかったこと自体が、今回の選挙の構造的な弱点だった。

都内在住の50代男性の現役創価学会員は、自身の選挙区の候補者についてこう語る。

「通り一遍の経歴紹介や政策論ばかりで、私たちの心に寄り添うような言葉がまったくなかった。例えば『同級生に学会員がいて、そいつが良い奴だったから学会の印象も良い』とか、嘘でもいいから学会員に寄り添う姿勢を見せてくれたら、私たちだって『じゃあ応援してみようかな』という気持ちになれる。それなのに、自分の経歴を淡々と紹介されたところで、やる気が出るわけがない」

「けじめ」をつけて再出発する候補も

一方で、同じ立憲出身でも評価が高かったのが辻元清美参議院議員だ。

辻元氏は過去に公明党や創価学会と激しく対立してきた経緯があるが、今回の選挙戦初日には応援に入った街頭演説で深々と頭を下げ、これまでの非礼を詫びることから演説を始めたという。この「けじめ」が関西の学会員の琴線に触れ、一定の支援を引き出したようだ。

三軒茶屋駅前で街頭演説をする辻元清美氏と蓮舫氏、2022年5月7日撮影
三軒茶屋駅前で街頭演説をする辻元清美氏と蓮舫氏、2022年5月7日撮影。(写真=Noukei314/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

創価学会員は選挙には慣れている。だが、「同じ信仰を持っている同志」を無条件で支援してきたこれまでとは状況が違うと考えられる。いままで以上に「この候補者はどんな人間なのか」「自分たちの信仰を尊重してくれるのか」といった点が、シビアに問われているのだ。

名物の「危うし!」もなく緊張感が高まらない

創価学会の支援がフル稼働しなかった理由は、候補者の資質だけではない。「選挙体制」そのものにも、今回は大きな異変が起きていた。

従来、公明党の選挙といえば、終盤になると機関紙である公明新聞の1面に「○○、危うし!」「逆転を許すな!」といった激しい見出しが躍り、組織全体に悲壮感に近い緊張感が走るのが常だった。しかし今回、そうした「煽り」は一切見られなかった。

さらに決定的だったのが、小選挙区単位での緻密な「成果報告」が求められなかったことだ。