これまで創価学会の選挙活動では、日々の活動量を数値化して報告することが徹底されていた。例えば、友人に投票依頼をした数を「F(Friend)」、その友人がさらに別の友人に依頼してくれた数を「○F(マルエフ)」などと符丁で呼び、地区ごとにグラフ化して競い合うような文化があった。この徹底した数値管理と報告義務こそが、末端の会員を突き動かすエンジンの役割を果たしていたのだ。
首都圏に住む現役創価学会員の30代男性は、今回の選挙戦の「緩さ」についてこう証言する。
「いつもなら、自分たちが掲げた目標数値に対して地元幹部が『あと何票足りない、断じてやり抜こう!』などと声をかけ、投票依頼を行ってました。でも今回は、上層部から具体的な数値目標が下りてこず、成果報告の義務もなかった。そもそも立憲が嫌いな男子部のメンバーも少なくないので、支援活動にいつもの勢いはありませんでした」
報告義務がなければ、当然ながらサボる人間が出てくる。また、目標がなければ達成感も生まれない。従来のような「鉄の団結」による公明党支援体制は構築できなかったのだろう。
「組織票」はどのように作られるのか
そもそも「組織票」とは何だろうか。
創価学会の公明党支援や、連合による旧民主党・立憲民主党支援など、特定の巨大組織による政党支援の動きは一括りに「組織票」と呼ばれる。特に創価学会による支援活動は、その盤石さから「集票マシーン」などと揶揄されることもある。
しかし、当たり前のことだが、実際に機械が票を集めているわけではない。一人ひとりの人間が、汗をかき、恥を忍んで知人に頭を下げ、積み上げていく努力の結晶が「組織票」の正体だ。
これまで紹介してきたように、候補者の働きかけが弱く会員の心が動かなかったり、支援現場に目標や緊張感が失われてしまえば、たとえ数百万人の会員を擁する巨大組織であっても、その機動力は著しく低下する。スイッチが入らなければ、マシーンは動かないのだ。
候補者に対する感情や、戦う意味を実感できるかどうか、現場に緊張感があるかどうか――そうした空気が揃って初めて「組織票」は動き出すものだ。今回の選挙でそれが成立していた選挙区は、決して多くなかった。
だが、例外もあった。今回の選挙で中道は大敗したが、その中でも創価学会が本腰を入れて支援活動を展開していたのが、八王子市を中心とした「東京24区」である。
「候補者が代わってホッとしました」
選挙結果は、自民前職の萩生田光一氏が8万5806票を獲得し、当選した。中道新人の細貝悠氏は7万781票で敗れたが、急遽擁立された新人候補にしては、自民党の重鎮に肉薄しているとも言える。
東京24区では当初、立憲民主党の有田芳生氏が出馬を予定していた。しかし、公示直前に有田氏は比例の東北ブロックへ回り、代わりに元都議会議員で32歳の若手、細貝氏が擁立された。


