若年層はなぜ高市首相を支持するのか。「年収の壁」の178万円への引き上げやガソリン税の暫定税率廃止などに恩恵を感じているのだろう。若年層は国債発行や減税による財政悪化への不安よりも、当面の生活改善を重視する傾向にあるという。首相が国民民主党の主張を丸呑みし、国民党支持だった若年層を自民党支持に取り込んでいる面もある。
首相が愛用するバッグやペンなどを買い求める「サナ活」の広がり、SNS上の分かりやすい説明がアイドルのような人気を博している。自民党の公式YouTubeチャンネルに1月26日に投稿された「高市総裁メッセージ」というPR動画は1.4億回以上(!)再生されている。会食しない、根回ししないという政治スタイルも共感を呼んでいるらしい。
争点潰しは、1月19日夕の解散表明の記者会見で、首相自身が「悲願」として、2年間限定で食料品の消費税ゼロを打ち出したことだ。1月21日には自民、維新両党が衆院選公約に今後設置する政府と与野党を交えた社会保障改革の「国民会議」で検討を加速することを明記した。永田町文学では「検討」は実施しないことを意味するのだが、有権者を相手にすれば、減税ポピュリズム合戦である。
各政党とも、消費税減税が物価高対策に有効だと訴えるが、巨額の財源不足や国債依存度の高まり、金利上昇や円安といった生活にとってのデメリットには言及しない。
中道改革連合は、1月19日午前の記者会見で、食料品の消費税ゼロを掲げ、恒久財源は、日銀が保有する上場投資信託(ETF)、年金積立金、外国為替資金特別会計(外為特会)を原資とする新たな政府系ファンドを設立して運用益で賄うと明らかにした。だが、これでは安定財源とはとても言えない。
「これまで行き過ぎた緊縮財政だった」
自民党も無責任さでは引けを取らない。食料品税率をゼロにすれば、国と地方合わせて年間4.8兆円の減収が見込まれる。首相は「補助金、租税特別措置の見直し、税外収入など、2年間限定であれば、財源は十分出る」と強弁するが、23年度の減税額は2.9兆円で、全廃しても穴埋めができないのではないか。
そもそも食料品の消費税率0%から8%への再引き上げは、政治的に無理ではないか。28年夏に参院選を控え、大増税を公約に掲げられることができるのか。
高市首相は、公示前の1月26日の日本記者クラブでの党首討論で、消費税減税の実施時期について「(26)年度内を目指したい」と、党内議論を経ずに踏み込んだ。制度設計もできておらず、党内の財政規律派から、首相は前のめり過ぎるとの反発も噴出したという。
公示後は首相の消費税をめぐる発言は封印された。首相は「これまで行き過ぎた緊縮財政だった。私はそれを変えたかった」(1月30日、大分市内)、「経済を強くして、税率を上げずとも税収が増えていく日本を作っていかないといけない」(2月4日、京都府長岡京市内)と訴える一方で、2年間限定の消費税率ゼロにはほぼ言及しなくなった。市場が財政悪化と認識しないよう警戒しているほか、発言の整合性を問われることを回避し、選挙戦を乗り切る作戦だろう。

