周囲は結果を出すも、自分は怒られ続ける
なんとか入社できたものの、当時の私は同期の中で間違いなく落ちこぼれでした。研修でのロールプレイングでも、コミュニケーション能力が高く話の面白い同期たちは、教わったことをすぐに見事に実践してみせます。一方、私はあがり症で口べた。講師役の先輩からは毎日のように叱られてばかりでした。
配属されてからも、しばらくは苦しい日々が続きました。「自分には営業のセンスがないのではないか」「やっぱり向いていないのではないか」という不安が常に頭をよぎります。周りの同期がノルマの達成や大口受注を喜んでいる中、私はなかなか結果が出せず、焦りばかりが募っていきました。
特にキーエンスのような実力主義の会社では、数字がすべてです。プロセスも評価されるとはいえ、最終的な売上がなければ居場所がありません。優秀な同期たちとの差を痛感し、自信を喪失していく毎日。それでも「人生で一度は何かしらの1位を獲ってみたい」という思いだけで、必死に食らいつきました。
そんな私が、後に全社の営業成績で3期連続を含む1位を5回獲ることになるのですから、人生とは分からないものです。
「売れる営業の型」を実感
配属されて1年目の冬、私にとって大きな転機が訪れました。ある大口案件の引き合いがあったのですが、自分一人では到底受注まで持っていける自信がありませんでした。そこで、同じ営業所のエースだった先輩に頼み込み、商談に同行してもらうことにしたのです。
それまでも先輩の営業に同行することはありましたが、それはあくまで「先輩のお客様」への訪問でした。横で見ているだけでは、どこか他人事で、本当の意味での学びにはなっていませんでした。しかし今回は「自分のお客様」です。必死さが違います。
先輩は私の目の前で、鮮やかに商談を進めていきました。私がつまずいていたポイントを軽々とクリアし、お客様の課題を浮き彫りにし、解決策を提示して受注を勝ち取ったのです。帰社後、先輩は「あの場面はこういう意図だったんだ」「資料はこう使うんだ」と、その一つひとつを丁寧に解説してくれました。
この経験で、私は「売れる営業の型」を肌感覚で理解しました。そして、できないことはできる人に聞けばいい、というシンプルな事実に気づいたのです。それ以来、私は恥を捨てて優秀な先輩たちに教えを請い、そのノウハウを貪欲に吸収していくようになりました。

