そもそも「退職代行」できないはず
筆者が日頃接している大学生たちの中で、自分の意見を言えなかったり、表現するのが苦手な者、何より年齢や属性の異なる人とのコミュニケーション経験がほとんどない者にとって、退職という非常にハードルの高い交渉を代行してくれたら助かるというのは明らかだと思います。
ネットニュースや記事も含めた爆発的なPRと困っているユーザーからのニーズが合致し、さらには、退職を認めないブラックな体質の企業の存在など、複合的な要因がすべて重なることで、モームリは時代の寵児となり、大々的な成功を収めたと考えます。
退職の代行をしてくれるニーズと書きましたが、今回の逮捕容疑は、弁護士あっせんに伴う手数料のことだと公表されています。
最も本質であるところの「退職の代行」、つまり退職を認めない企業に、正当な権利として退職を認めさせることは、法律上弁護士や労働組合しかできません。
それらに該当しない民間業者の場合、できることは退職交渉の代行ではなく「退職の意思伝達の代理」なのではないでしょうか。「退職代行」というサービス名称は、ユーザーの知識の無さにつけこんでいるとも取れるように思います。
「退職代行」からの電話で確認すべきこと
筆者は企業側から、退職代行の連絡を受けた時の心得や対応についてもよく聞かれますが、交渉ができない相手であれば、そもそも対応の必要性もないことになります。ゆえにそうした連絡が入った際は、必ずその連絡をしてきた存在が誰で、どんな立場かを確認して対応を決めるようにアドバイスしています。弁護士や労組であれば、対応を拒絶はできません。
しかし「代行」ユーザー側、つまり労働者側は、こうした法的な知識が無いことも少なくないので、単に料金で比べて安い業者を選んでしまうということはあり得るでしょう。いずれにしても会社側は、退職代行からの連絡があった場合は、カッとならず、冷静に、相手の素性を確かめて対応する必要があります。
「退職代行は業者以上に、そのようなサービスを依頼する者がけしからん」という考えもあります。会社がコンプライアンスを理解していれば、そもそも代行を依頼する必要性に疑問もあります。しかしいわゆるブラック企業、ブラック職場も現実に存在し、「退職する時は3カ月前までに申告」とか「退職時は有給使用・消化は認めない」「退職する時は代わりの社員を見つけてくる」といった、そうとうめちゃくちゃなことを言われたという話は実際にあるようです。

