情報弱者をターゲットにしたビジネスモデル

世の中の会社すべてが、立派な、コンプライアンス意識を持った組織とは、当然ですが言えません。無法な圧迫によって辞めさせないなどは、典型的ブラック企業の特質の一つでもあります。そういった職場で働く人の中で、十分な法律知識の無い人がこのビジネスでは主な顧客になると考えられます。

ネット上、SNSなどでも間違った情報含めてさまざまな意見も交錯し、疲弊して、何が正解なのかわからなくなっている人はいるでしょう。そんな時に、SNSでサッと申し込めて、嫌な思いや厳しい言葉を投げかけられることもなくさっさと辞めることができるのであれば、それに飛びつく人がいても仕方ないだろうと思います。

退職代行というビジネスの問題点は、法的な不整備がありながら、このようなある種の情報弱者の弱みにアピールした点が挙げられるかもしれません。藁をもすがる思いで、退職代行によって苦痛から解放された人は実際にいるはずです。しかしそのやり方には大きな違法性があったというのが、今回の事案でしょう。

オフィスで頭を抱えている女性
写真=iStock.com/Jirapong Manustrong
※写真はイメージです

見直すべきはビジネスの問題と会社の労働環境

問われるべきは退職代行を認めないことでも、退職代行を使った個人を断罪することでもなく、コンプライアンスがもはや経営の大前提となっているという認識の有無です。このとらえ方を理解・遵守する意識が欠け、今回の「モームリ」のように法律違反とも疑われるようなことをすれば、時代の寵児のような企業であっても一般企業でも、一気にビジネスの存続が危ぶまれるというのが、現在の企業環境だと捉えています。

モームリや退職代行ビジネスの違法行為が断罪されても、コンプライアンス無視のブラックな職場がある限り、この種のニーズが消えることはありません。

退職代行ビジネスについては、その意義や賛否を議論してもあまり意味がないと思います。ニーズは人間の原始的、本源的欲望や必要性から発するものであり、倫理観や価値観は正に「多様化」しており、統一する方が無理です。

純粋なコンプライアンスの問題として扱うべきですし、過度な熱狂や幻想、誤解については、今回の逮捕はタイミングとして退職代行というビジネスの危うさを浮き彫りにすると同時に、会社の労働環境を見直す機会になったのではないでしょうか。

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