形あるすべてのものを信仰の対象とした日本人
もともと日本人は形ある自然界のすべてのもの、太陽や月、山や岩、大木や河川、雷や火などに霊格を見出し、神々として信じ、畏敬した。古代に人力で制御できないものをすべて神とするのは、多くの民族にも共通しておりアニミズムの世界である。ただ、自然を制する呪術師や預言者、部族王など人的崇拝を経てアニミズムを脱するのが一般的なのに対し、日本の場合は神道として宗教化した。八百万の神として祀ったのである。
6世紀以降、国家体制を築く過程で「記紀」を編纂し、国生みの物語から始めて天皇を天孫降臨した神の子孫として神格化したのも大きい。しかも、八百万の神を信奉するが教義を持たない神道は融通無碍で、中国から伝来した仏教や儒教を、国家の運営と護持のために利用した後、平安時代になると神と仏を一体化させた。
神仏習合であり、「神道の神々は仏教の仏の化身である」という本地垂迹説である。皇祖神の天照大神は大日如来の化身というわけで、仏が神の上位にいる印象だが、実際は神道の懐の深さの証明で、神の化身が仏だという逆本地垂迹説を述べる人もいる。
いずれにせよ仏教も神道も多神教であり信心するものを幅広く救う。仏教開祖の釈迦は厳しい修行の後、心身を悩ませる煩悩を脱して悟りの境地に至ることを弟子や信徒に求めたが、日本に渡来したのは釈迦の教えをそのまま継承する小乗仏教ではなく、能力も知識もない衆生を救済する大乗仏教である。みんなのための「大きな乗り物」という意味だ。
日本人のほとんどは「無宗教」を自認する
このあたりの幅広さが神仏習合を長く続けた日本の良さだが、逆に偶像崇拝を禁じて唯一神への絶対的な帰依を求めるキリスト教やイスラム教など一神教とは異なり、信仰への懐疑を生む。多くの日本人が「無宗教」だと思っているのはそのためで、葬儀や法事を葬式仏教に頼っていても、宗派を意識して仏教徒と名乗る人は少ない。
NHK放送文化研究所が2018年に実施した「宗教」に関する調査によれば、信仰している宗教について「仏教」と答えた人が31%、「神道」が3%、「キリスト教」が1%だった。
「冠婚葬祭の時だけの宗教でなく、あくまであなたご自身が、ふだん信仰している宗教」という但し書きはついていたものの、神仏を拝む頻度は「年に数回」という人が約半分で、「薄くなる信仰心」が指摘された。
「信仰している宗教はない」という62%の回答者と合わせ、仏教徒を自認している人を含め、日本人の多くは葬式と法事で仏教に親しむ葬式仏教を風俗習慣として選んでいるということだろう。

