「地元の日常」に溶け込ませた

夕方には訪問客の年齢層が一気に広がる。敷地内の塾や英会話教室に通う子供や、待ち合わせる長崎西高校・長崎東高校などの学生、保育園で子供を引き取ってから出てくる親子など。

「無料で滞在できる客席がある」だけで、地元の人々は集まるのだ。

かつ、当初の計画になかったスーパー「フードウェイ」の買い物客や、散歩に来た高齢者も多い。かつ、ここで買ったおやつを食べながらカードゲームに興じる子供や、参考書を広げて勉強する高校生、敷地内のスタバで買ったコーヒーを客席で飲むサラリーマン、フードコートで日没前から吞んだくれている集団などが入り混じり、客席はまさに「日常の風景」そのものだ。

スタジアムシティに1日中いるだけで、長崎のグルメを堪能しながら、日常の会話が乱れ飛ぶ濃密な空間を味わえて、どんな観光地より「長崎」を感じることができた。

そして、滞在する人々のほとんどがフードコート・スーパーの商品などを買い求めていて、「スタジアムを普段使いする人々」が、収益獲得に貢献している様子も伺えた。

人々は「仕事・所用があって」「行きたい店があって」「ゆっくりできる店があって」といった理由で、その場所に集う。「スタジアムの客席がフリースペース化」しているからこそ、試合がない日も継続的な集客ができ、一定の採算性を保てているのだ。

スタジアムシティのフードコート内
筆者撮影
スタジアムシティのフードコート内

「あえて遠回りして歩かせる」構造

スタジアムシティは、構造にも仕掛けがある。敷地に入るメインのエスカレーターは両端にあり、テナントが集積するエリアにあえて最短距離で行かせない設計だ。

一見すると商売上は非効率に見えるが、例えばイオンモールでも、テナント料を生まない「吹き抜け」をわざわざ作り、周辺には来客が休めるベンチを設置している。数階の高さをぶち抜いた空間は解放感を生むだけでなく、空間のまわりを回遊する人々を生み出すのだ。

イオンモールとスタジアムシティ、商業施設としての共通点は、意外と多い。

スタジアムシティの「サッカーコート」はイオンモールの「吹き抜け」のようなもので、まわりを回遊する動線づくりがテナントと顧客の接触機会を増やし、収益化に繋がる効果を挙げている。

ほかにも収益面では、アリーナでのバスケ・大相撲の開催や週末のライブ誘致などの効果もある。来訪客が食事やショッピングも兼ねて、長時間施設内を歩き回りお金を落としていくような構造も、利益獲得に繋がっているのだ。