長崎は例外中の例外だった
過疎化が続く人口40万人弱の地方都市・長崎での「スタジアムシティ」建設は、サッカースタジアム建設の成功例として語られることも多い。しかし各地では、続いて計画されたスタジアム建設計画で土地・資金確保に難航したり、秋田県のように、地元自治体がJリーグの対応を「傲慢」と表現するような対立が起きたり、せっかく開場しても運営方針で対立が起きたりする。長崎と他の地域で、なぜこうも明暗が分かれるのか?
実は、根本的な条件が違い過ぎる。一般的なスタジアムは地元自治体が建設を担い、運営を公的機関が担う「公設公営」地元のJリーグクラブなどに運営を託して「公設民営」が多いが、長崎の場合は、1000億円にまで膨れ上がった建設費用もすべてジャパネットが担う「民設民営」で、長崎県・長崎市の税金は、ほとんど動いていない。
多くの地方都市の「公有公営」の場合は、スタジアム建設に税金を支出するための理解を得るために、長期間にわたっての調整が必要となる。かつ、建設後も「公営」としての条例に縛られるため、営利目的の施設を併設できない場合も多い。
さらにテナント入居する飲食店の規制までかけられる場合もあり、球場を満員にしても利益を吸い取られるような契約にたまりかねて、プロ野球「北海道日本ハムファイターズ」が本拠地を移してしまった札幌ドームのような事例もある。
税金と条例が成功を阻む
その点、長崎の場合はジャパネットが1000億円もの経費を負担するかわり、収益をホテル・サウナ・商業施設などの併設も推し進め、まわりに口を差しはさませなかった。ジャパネットが全面的に責任を負う「民設民営」だったからこそ、徹底的なマネタイズで収益を確保できる「スタジアム“シティ”」の建設が可能となったのだ。
さて、長崎以外の他地域で「民設民営」スタジアムは可能なのか?……長崎でいうすべてを民間で賄えるに越したことはないが、ジャパネットのように1000億円をポンと出して、その後も運営に汗をかいてくれるような「志が高い」企業は、残念ながら他県にない。
近年の新スタジアムでは、元・サッカー日本代表監督の岡田武史氏の実業家としての奮闘で「自治体との交渉で市有地の長期無償貸与」「地銀の雄・伊予銀行からの「サステナビリティ・ローン(社会貢献などの条件がついた融資)」といった条件を引き出した「アシックス里山スタジアム」(J2・FC今治の本拠地)くらいしか、民設民営でのスタジアム新設の事例がない。ほか大半の地域では、税金支出の是非を巡って、自治体との粘り強い交渉を続けるしかないのが現状だ。

