実績より未来像を問う慶應
――慶應に受かったみなさんの志望理由を聞かせてください。
【デビッド】私は志望理由書を「地方活性化」をテーマに書きました。宮崎県出身なのですが、学生が都会に出るとなかなか戻って来ない現状を何とかしたいという思いを伝えました。面接では「他大学でもできるんじゃない」と突っ込まれましたが、元鳥取県知事の片山善博教授に師事したいと考えていて、「地域活性化は他大学でもできるけれど、片山教授は慶應にしかいない」と熱意を伝えましたね。
【高松】自分はフェリス女学院というお嬢様学校に通っていたのですが、中学1年のときからAOでSFCに入ると決めていました。
【一同】おぉ。すごいね。
【高松】お笑いの先輩たちも結構、AO入試を利用して大学に入っていたので。ただ、「お笑いで大学に入る!」って決めていたのに、自分はお笑いの高校生大会の予選で17連敗したんです。初めは恥ずかしくて、そのことを誰にも言えませんでした。でも、17回挑戦したっていうのが、自分の執念みたいなものとしてアピールできるかなと。SFCのAO入試1次試験に合格した後に18回目の予選出場の結果が来て、ようやく突破できました。将来は爆笑問題の太田さんのように「お笑いと社会問題」を融合したネタをやりたいという話もしました。
【中島】ディベート甲子園で、先輩方が2年連続優勝だったのに、自分の失敗で3位に終わってしまったんです。責任を感じて自殺未遂でICU(集中治療室)に入ったこともあって、鬱(うつ)状態になってしまった。ケアで鬱状態は治ったのですが、その後に社会に戻るための心の支えって意外と少ないんだなと思って。そういうサポートをしていくための研究がしたいと書きました。高校の授業が休みの日に、SFCの教授に連絡し、講義見学に行ったりしたのも評価していただけた気がします。
【高松】ただ、慶應の場合は「こうした人がAOに受かった」っていう話を聞いてまねしようとしてもうまくいきません。経験や経歴が多彩でも落ちる人はたくさんいます。
【デビッド】AOに受かるためだけに積んだ経験では、熱意をこめて語れないし、面接でボロが出るんじゃないかな。
【中島】大事なのは、「やりたいこと」を「やってきたこと」から説明できることだと思います。自分の過去を掘り下げて考えていけば、特別な経験がなくても、人と違った問題意識やそう考えるようになったきっかけがあるはずです。それを志望理由にしていけばいい。
【高松】私は日大藝術学部の面接で面接官とケンカしました。志望理由がしっかりしていたから、あそこまで熱くなれたんだと思います。