「誰に届けるのか」がすべてを決める
ということで、上江洲さん、大輔、そして僕は、この本の企画を再スタートさせた。これは僕が思うことだが、企画で一番大切なこと、それは「そもそもこの本は誰が読むのか?」というところだ。
※上江洲さん=担当編集者、大輔=すばる舎の営業マン
「大輔に向けて」と机の上に大輔の写真を置いて書いてはみたものの、そうするとあまりにもビジネスマン寄りの会話術の本になってしまう。ということで、いったん大輔を想定読者から外し、あらためて読者がどんな人なのかを考えた。
「たくさん売るためには、ふだん一番忙しくて、本を読まない人に向けて書いたほうがいいってことだよね?」
「ですね」
「それってどんな人だろう?」
「うーん、あ!」
大輔が何かを閃いたように言った。
「この本はしげ兄のことを知らない人めがけて書いてください」
「知らない人?」
「はい。正直、いまのしげ兄の知名度では、マックスで10万部までです。ファンだけに向けて書いてたら、その壁を越えることはできません」
たしかに大輔の言う通りだった。それまでの僕にとって、10万部というのは1つの壁だった。だから、どうすればその限界をもっと引き上げられるのか、そこを深く議論した。
「イオンに買い物に来る主婦」をターゲットに
都心部だけで売れるビジネス書だと、マックスでも10万部だ。そもそも多くの人が名前を知っている有名人の本だって、10万部というのはそんなに簡単な数字ではない。その限界を超えるには、より大きな市場をカバーしなければならない。それはどんな市場かというと、ショッピングモールに入っている未来屋書店やくまざわ書店やTSUTAYAなど、いわゆる、郊外にある書店でも自然と売れるような客層の広い本ということになる。
「すでに、しげ兄を知っているビジネスマンや、もともと啓発本が好きな人たちが目的買いするような本じゃなくて、イオンに買い物に来る主婦が気軽に手に取ってくれるような本を目指しましょう」という言葉が、大輔の口から飛び出した。
大輔は、足で稼ぐ現場主義の最たる人間だ。その行動は一貫している。どんなに交通の便が悪いところでもタクシーは使わない。地元の人たちが乗っているバスを使うし、とにかく歩く。そしてショッピングモールに着いても、エレベーターには乗らない。必ずエスカレーターで書店のあるフロアに上がっていく。
それらの行動はすべて「どんな人が、どんな導線で、どんな本を目当てに集まる書店か」を知るためだそうだ。

