口コミの中心にいる人を狙う
そうした徹底した現場目線から出てきた「イオンに買い物に来る主婦が、気軽に手に取ってくれるような本」という言葉には、ものすごく説得力があった。
ショッピングモールに来た家族連れ、お茶を飲みに来た人、マンガを買いに来た人、そういった方々についでに手に取ってもらえる本でないとヒットは狙えない。
そして、40代50代の女性は、つながりの中心にいる人たちだ。そのネットワークは驚異的で、その層に支持されれば、その人の子どもにも、ママ友にも、おじいちゃんおばあちゃん世代にも、オールターゲットで口コミが広がっていくはず。
「一番忙しくて、本から縁遠い人。それは子育て中のお母さんです。この人たちが読んでくれれば、ほぼすべての層をカバーできるはずです」
「まじ? 俺、その人たちに一番縁遠いんだけど」
「いえ、その人たちに向けて話し方の本を書いてください」
子育て中のお母さんと話し方? いったい何を書けばいいんだ? 僕は焦った。
商売には「プロダクトファースト」と「マーケットイン」という二軸の考え方がある。プロダクトファーストは「私は思いを持ってこの商品をつくりました。この思いに共感してくれる人だけがどうぞ」という、商品ありきのスタンス。
「相手の困りごと」から商品を考える
これに対してマーケットインは「世の中の多くの人が困っていることを解決する商品ができました」という、お客さんの要望ありきの商品づくり。
同じ本でも、小説を書く作家さんは前者でいい。むしろある意味、プロダクトファーストであることが読者の要望そのものだからだ。しかし、大輔が言っていたのは後者だ。つまり、「売り場から逆算して、読者との接点から本をつくっていきましょう」ということだった。そうなると、徹底的な市場調査が必要となる。
これはあくまで僕の私見ではあるが、最近の多くの読者が本を買う動機は、「おもしろそう」「読みやすそう」「あ、私に関係あることだ」というこの3つの要素のような気がしている。もちろんすべての本においてこれが正解かどうかはわからないが、僕は本を書くとき、特にここを大切にしている。
ということでチームで議論を重ねたその結果、見えてきた第1読者。それは「ローカルの郊外スーパーに買い物に来た主婦」。第2読者は「基本的に本を読むのが苦手な人」。第3読者はもっと大きく広げて「意識普通系」。これはつまり、いつも本を読む意識の高い人ではなく、ほとんど本を読まない人、もしくは、年に数冊本を読む程度の人たちが当てはまる。

