たくさんの人の立場から言葉を選ぶ
「この言葉は本当に届いているのか」
テレビは多くの人にご覧いただいていますが、スタジオにいる私たちは、みなさんのお顔を拝見することはできません。
だからこそ常に、「この言葉は本当に届いているのか」と自分に問いかけています。
新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出された時、テレビ画面は「人の少ない渋谷のスクランブル交差点」を映し出しました。
この交差点をどう表現するか。アナウンサーによって、テレビ局によって、それぞれのスタンスがありました。
あの緊急事態宣言の状況下ですから、異様な光景とするか、あるべき光景とするか、単に「人がいません」とだけ言うか。
そんな中、私が大切にしていたのは、たくさんの人の立場から言葉を選ぶということでした。
医療従事者は
飲食店経営者は
学校の先生は
感染症の専門家は
ご高齢の方々は
赤ちゃんのいるお母さんは、
渋谷の交差点をどんな思いで見ていたのか。
いろいろな立場の方の顔が浮かびました。
でも、あちらを立てればこちらが立たずの堂々巡りで、言葉が決まりません。
時間を共有している人たちにメッセージを伝えたかった
結局、私は
「今テレビを見ているみなさんのご協力で、人との接触が防げています」
と、お伝えしました。
この交差点にいない人は、テレビの前にいるかもしれないと思ったからです。
もっと多くの人に伝わるメッセージもあったはずです。
しかし私の言葉は、テレビをご覧になっている方にしか届きません。
だからこそ、今時間を共有しているみなさんにメッセージを伝えようと考えたのです。
私は、誰かを批判することよりも、誰かを励ますことを選びました。
この言葉に対する嫌悪感もあると思います。
しかし私は、
「政府にはしっかりとした対策を求めたいものです」
といったようなコメントで、いただいた数秒の機会を消費したくなかったのです。
見栄えのいい言葉だけが届くのではなくて、鋭い批判だけが力を持つのではなくて、相手を頭に思い浮かべた言葉こそが届くのだと信じています。



