「国民のため、やむにやまれず」

2016年の大統領選でトランプが勝者となり、第一次政権がスタートする頃、世界はトランプとの接し方に悩んでいた。暴言ともとられかねないトランプの物言いは物議をかもしており、オーストラリアのターンブル首相などは会談前にトランプの移民政策に対する姿勢に苦言を呈したほどだ。しかしそのために米豪会談は後回しにされたうえ、電話会談の後にはトランプが「最悪の会談」と評するに至った。豪側が“政治的に正しい”発言をしたばっかりに、米豪関係は悪化したと言わざるを得ない。

トランプ米大統領(左)との会談で握手する安倍首相
写真=共同通信イメージズ
トランプ米大統領(左)との会談で握手する安倍首相=2019年6月28日、大阪市

一方の安倍は就任式を待たずしてトランプに会いに行き、懐に飛び込んだことで「黄金時代」とも呼ばれる日米関係(安倍・トランプ関係)を築いた。『安倍晋三 ドナルド・トランプ交友録』(星海社新書)にも書いたが、安倍はトランプとの関係について各界の人々から冷ややかな視線を向けられていた。

投資家のジョージ・ソロスからは「あんまり仲良くすると、あなたのためにならない」と忠告されたというし、G7の某首脳からも「トランプとあなたはずいぶん仲がいいんですね」と皮肉めいた口ぶりで声を掛けられたことがあるという。安倍はその都度言い返したというが、それは日米関係を思えば背に腹は代えられなかったためだ。そこには安全保障環境の悪化を背景とした「国民のため、やむにやまれず」の思いが滲む。