――ここには柳井さんの熱いメッセージだけでなく、若い人に向けた仕事への取り組み方が具体的に書かれている。いわば「仕事の教科書」ともいえるのでは。
【柳井】私は店長たちに、つねづね「店長の仕事でいちばん大切なのは作業を割り当てることだ」と言っています。
たとえば、できる店長とできない店長がいる。できない店長は自分ひとりで頑張る。自分ひとりの理想の店をつくろうとする。それに対して、できる店長は全従業員と一緒になって仕事をする。従業員のそれぞれの立場を考えて、仕事を割り振っている。
うちのような小売りではパートの従業員が大勢、働いています。彼女たちは子どもを育てたり、食事の用意をしたり……、家事は彼女たちにとって大切なものです。ところが、できない店長はそういうパートの従業員の立場を無視して、機械的に作業を割り振る。それでは、働く人のモチベーションは上がらない。
作業を割り振るには、やる人の立場を推し量ることです。子どもを迎えにいく必要がある人には、そういったシフトを組む。熱がある人がいたら、早めに帰ってもらって、代わりの人に作業を頼む。それぞれの人の事情を聞いて、できるだけ働く人の希望に沿うようにする。むろん、すべての人の希望を100%かなえることはできません。しかし、事情を聞かずに自分の思い通りに仕事を進めても、うまくいかないでしょう。これは店長だけのことではなく、部下を持つ人すべてに当てはまる話です。
――本書では柳井さんの本の読み方も紹介されています。若い学生、ビジネスマンに、もう1度、本の読み方、選び方を教えてください。
【柳井】本を読むことはビジネスマンに限らず、誰もがやらなくてはならないことでしょう。そして、本を読むうえで大切なことは、頭でっかちにならないこと。ビジネスマンならば読書を通して知識を増やすことよりも、仮説を頭に描きながら、考えながら読むこと。
本書には私が勉強になった本をいくつか挙げてあります。いずれも読むには時間がかかるし、他の著作も参考にしながら読み進めていかなくてはならない。しかし、本来、読書とはそういうものでしょう。脳から汗を流して、読むこと。