徳川幕府が弾圧するほどの秀吉ブーム

加えて『絵本太閤記』は、その人気から歌舞伎や人形浄瑠璃の演目にも採用された。寛政11年には人形浄瑠璃『絵本太功記えほんたいこうき』が初演され、翌年には歌舞伎版の『恵宝えほう太功記』が上演されるなど、庶民の娯楽として広く受け入れられた。これらの演目は、秀吉の「貧しい百姓から苦労を重ねて天下人へ」という物語を描き、庶民の共感を呼び起こした。

豊臣政権を滅ぼして成立した江戸幕府は、徳川将軍家による支配の正統性を脅かしかねない秀吉顕彰の動きに厳しい姿勢をとったが、にもかかわらず秀吉の生涯を描いた作品は絶大な人気を誇った。身分が固定化された江戸時代を生きる庶民にとって、秀吉のような「立身出世」の物語は大きな憧れの対象だったからである。

秀吉を主人公とする江戸時代の作品群は、秀吉の「人たらし」を強調し、彼を親しみやすい英雄として描いたのである。