「うっかり賞味期限切れ」を避ける工夫

また外側だけでなく、ジャムの内容量も緻密に計算されている。

「内容量は結局、165グラムで決着しました。これは、1回の使用量をだいたい20〜30グラムとして計算して、8〜10回程度で使い切ってほしいという目安です。平日の朝食にジャムパンを召し上がるご家庭だと、だいたい賞味期限である2週間で食べ切れる計算になります。やはり鮮度があるうちに美味しく味わっていただきたいなと私どもとしては考えております」

また商品ボトルには、こんな“さりげない気遣い”も隠されている。

「従来の瓶ジャムだと、冷蔵庫の棚の奥のほうへ置かれてしまって、気付いたら賞味期限が切れてしまっていたという声を聞くことがありました。そこで、新商品はせっかくプラスチックボトルになりますので、形状を楕円にすることによって、調味料のように冷蔵庫の内側ポケットに入れていただけるように工夫しました」

ボトルの硬さについては検討を重ね、極端に力を入れなくてもジャムが出せる容器を実現させたが、反省点も残ると松本さんは言う。

「冷蔵庫に入れて使用するとき、買ったばかりよりも容器が硬くなってしまって、ジャムを出すのに少し力が必要になるというご指摘は、モニター様のアンケートでいただいております」

“硬さ”にも工夫をこらしたボトル
撮影=プレジデントオンライン編集部
“硬さ”にも工夫をこらしたボトル

「3本目の柱」になる未来を信じている

他方で、新商品開発の狙いが顧客に届いていると実感できる場面もある。

「瓶ジャムでは一定数いただいていた、『子どもが舐めたスプーンを入れてしまってカビてしまった』という声が、『アヲハタ Spoon Free』においては聞かれなくなりました。衛生面においては、新商品の意図が奏功していると感じます」

従来の人気商品「アヲハタ55(ゴーゴー)」「アヲハタ まるごと果実」は今後もなお、息の長い商品として人々に愛され続けるだろう。これらに大きな不備や欠点があったわけではない。だが生活者の目線に寄り添い、少しの不便を改善していくこと。商品開発の醍醐味は、おそらくその一点にこそある。

「今はまだ途上ですが、5年後10年後、『アヲハタ Spoon Free』が3本目の柱になる未来があり得ると私は信じています」

願いにも誓いにも聞こえる松本さんの言葉は、期待感に満ちていた。

「3本目の柱になる未来があり得ると信じている」と話す松本翔吾さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
「3本目の柱になる未来があり得ると信じている」と話す松本翔吾さん
【関連記事】
愛子さまが食べた"開けてビックリ"の駅弁とは…老舗駅弁屋が効率化の時代に「手作り」にこだわり続けるワケ
だから日本人の「百貨店離れ」が進んでいる…三越伊勢丹HD元社長がルイ・ヴィトンを絶対に入れなかった理由
「出光は社員を1人もクビにしない」経営難でも1000人以上を雇い続けた出光佐三の不動の"経営哲学"
トヨタでもサントリーでもない…ハーバード大学経営大学院が教材にする従業員850人の日本の同族経営企業
なぜサンリオ辻会長は「やなせたかし」に資金を出し続けたのか…詩集だけではない反対押し切り始めた新事業