「クマへの餌やり行為は死刑宣告に等しい」
オマール氏の事件を受けて、ルーマニア国内では迷惑外国人観光客への不満が爆発。地元メディアは、「クマへの餌やり行為は死刑宣告に等しい」という救助隊の責任者による発言を繰り返し報道した。
SNSではオマール氏の無謀な自撮りや餌付けに対する批判が急増。中には「すべてはセルフィーを撮った馬鹿者のせいだ」「このクソイタリア人が」「彼はテディベアを相手にしているつもりだったんだろう」といった厳しいコメントも寄せられた。
地元の環境団体は、オマール氏よりヒグマ保護を優先し、彼を殺害したヒグマを射殺した行為が犯罪にあたるとして刑事告発に踏み切った。
ルーマニア環境省は「事件は人間の行動が原因で起きた」という見解を発表。さらについ最近の11月6日には法改正を実施し、クマへの餌やり行為に罰金を課すとともに、住宅地に出没したクマを即時射殺できるようにした。
SNS投稿を目的としてヒグマに接近する迷惑観光客が大問題になっているのは、日本も同じだ。
2023年5月、北海道を拠点にYouTuberとして活動する男性が、動画撮影中に森の中でピザを食べていると、ヒグマの親子に遭遇。男性はピザをその場に残して避難し、遠くから撮影を継続。動画にはヒグマの親子が男性の残したピザを食べる光景が映されていた。
男性はその動画をYouTubeにアップする。
日本でも「迷惑YouTuber」が大炎上
後日、撮影場所の近くで、1頭のヒグマが駆除されたが、それがまさに男性YouTuberが遭遇した母グマだったことが判明。男性YouTuberが残したピザを食べた母グマは、人間を恐れず近づくようになり、地元のハンターに駆除されてしまったのだ。
「ヒグマが駆除されたのは、このYouTuberがピザを与えたことが原因」
「結果的に地域の人々を危険にさらした」
など、男性YouTuberには批判が殺到。大炎上事件に発展した。
YouTuberは謝罪動画をアップし、意図した行動ではなかったと釈明。動画を削除した。
SNSで大きな反響を得るという目的が、観光客による迷惑行為をエスカレートさせているという側面もある。
ただ、冒頭でも述べたように、バズ目的でヒグマに接近し、餌付けを行うのは非常に危険な行為と言える。接近した本人が被害にあうだけでなく、間接的に別の(無実の)観光客や地元住民を危険にさらしかねない。そうした悲しい事件を防ぐためには、各自がヒグマへの理解を深め、理性的な行動を心掛ける必要がる。
一方、性善説に基づく対策だけで全ての事故を防ぐのは難しい。
現状、法規制としては餌付け行為への罰金しかないが、いざという時の被害の大きさを考えれば、もう少し強い規制も場合によっては検討すべきかもしれない。
いざという時に自分が被害にあわないためにも、良識と常識ある行動を心掛けたい。
(初公開日:2025年11月26日)


