料理教室の検索サイト、クックステップ事業を推進する山岸延好執行役は、複数の新規事業が一気に立ち上がった要因について「適切なタイミングがきた」ことを挙げる。
「09年に上場してから2、3年はメーンの収益源である会員事業と広告事業にリソースを配分せざるをえなかったのですが、2つの事業が盤石になり、数年前から採用に力を入れてきたのでミドルマネジメント人材も育ってきました。3年前に複数の新規事業の種をまけたかというと、それはできなかったと思います」
上場した09年の従業員数は46人、3年前の10年は69人だ。現在は128人であるから、3年で組織も約2倍になっている。山岸執行役が入社した05年の社員数は5~6人くらい、ユーザー数は100万人弱であったという。入社以前、山岸執行役もまた自身で起業した経験の持ち主である。
「新卒で伊藤忠に入り、2年で辞めました。先のことは何も決めていなかったのですが、もともと自分で何かやりたいと考えていて、このまま居続けたらズルズルいってしまうと思ったんです。創業者の佐野陽光とは大学の同級生で、実は当時、3カ月ほどクックパッドを手伝ったことがあります。その後、自分で事業を始めましたが佐野とは連絡を取り合っていて、一時期は私の会社に彼が間借りしていた時期もありました。そこからクックパッドに入社したのは、この事業を伸ばしたほうがおもしろいし、将来性もある。それに『毎日の料理を楽しみに』という理念に私が共感していることがあります。家族で食卓を囲むとか、お母さんの手料理を食べるというところに本質的な幸せはあると思うんです」
山岸執行役が担当するクックステップは、全国の料理教室の検索とレッスンの予約ができるサービスである。この事業アイデアは「祖母から母へ、母から娘へと受け継がれてきた料理の伝承が途絶えているのではないか」という問題意識が出発点になっている。若いユーザーには料理の基本が身についていないため、レシピがあってもその通りにつくれない人もいる。ならば料理を学ぶ領域を事業化してみてはどうか、というわけだ。