21兆円の経済対策で物価上昇は止まる?

現在、日本経済はさまざまな課題を抱えている。その中で、最も差し迫った課題は、物価の上昇、金利上昇、円安の進行だ。

過去約3年間、わが国の物価は上昇基調で推移してきた。今年10月、消費者物価の総合指数は前年同月比で3.0%上昇した。うるち米(コシヒカリを除く)は同39.6%、チョコレートは36.9%上昇した。

主に生活に必要な品目の価格上昇は賃金の伸びを上回り、個人消費に勢いはない。人手不足による人件費の上昇も物価押し上げ要因になった。ここへきてやや落ち着いたものの、人手不足の問題は今後も国内の物価上昇要因になるだろう。

高市首相は政権の発足直後から、物価対策を最重要課題に掲げた。11月21日、打ち出した総合経済対策は21.3兆円と大方の予想を上回った。財務相の当初案は17兆円と昨年の経済対策を上回る規模だったが、高市首相は積み増しを指示した。

自民党内部からは、「やりすぎではないか」との指摘が出たようだ。経済対策は、主に物価高で困っている人々を救済する政策で、物価の上昇に歯止めをかけるものではない。

「悪い金利上昇」が起きてしまった

物価上昇と、財政規律への懸念から長期金利は上昇傾向にある。高市政権で国債増発の懸念が高まり、10年を超える年限の金利上昇は鮮明化した。財政悪化さらには財政破綻リスクを反映した、悪い金利上昇である。

名目金利からインフレ率を引いた実質金利が、マイナスの通貨に投資する意義はあまり見当たらない。むしろ、資金を借り入れて他の通貨に投資する=ファンディング通貨に使う投資家は増える。高市政権の発足をきっかけに、政府は日銀に緩和的な金融環境の継続を要請するとの見方も増え、円安は加速した。

それに加えて、財源を欠いた経済対策実施で財政悪化懸念は高まった。11月20日、1ドル=157円台後半まで円は下落した。円安は輸入物価の上昇要因になる。物価上昇は加速するだろう。円安の進行、物価上昇で日銀の利上げ観測は高まり、金利も上昇した。