居酒屋を取り巻く環境は厳しい
さらに言えば、コロナ後の外食業界では、アルコール比率の高いパブ、居酒屋などはコロナ前の6~7割という需要縮小が常態化していて、業界内でも厳しい環境が続いている。そんな居酒屋業態の中に大手ではないが、売上も客足も最近絶好調の企業がある。それが今回取り上げる、串カツ田中である。まずはどんな感じなのか、既存店売上の資料を見てもらおう。
図表3は串カツ田中のIR資料だ。既存店売上、客数、単価の推移を示している。今年に入って売上は前年比大幅プラスとなっているが、単価を上げず客数を1割以上増やすことによって実現しているのが特徴だ。図表4は居酒屋業態に属するチェーンを並べたものになるが、串カツ田中は2024年8月以降急速に客数を増やし、その後も居酒屋では最も好成績を維持しつつ、他社との差を広げつつある状況にみえる。なぜ、こんなに好調なのか、少し様子を見てみることにした。
顧客の7割がファミリーや女性がいるグループ
串カツ田中は、大阪名物の串カツ屋チェーンで、串カツ文化のない関東圏を中心に急速に店舗網を拡大、今では店舗数約350店、売上201億円に成長した(図表5)。
変わっているのは、店舗が繁華街だけではなく、住宅地にも多いということであろう。最初の店が世田谷ということもあり、繁華街のサラリーマン向けの居酒屋というよりも、地域住民、女性客に来てもらえることを重視していたのだという。さらに2018年には改正健康増進法に先駆けて、居酒屋なのに全面禁煙を導入、女性客の取り込みに成功、最近では、かつて3割超だった男性サラリーマン比率が16%程度まで下がり、ファミリーや男女客(女性がいるグループ)の比率が約7割と圧倒的になった(図表6)。これが今の好調につながった。




