今でも平均3000円以下で集まれる場所
日本フードサービス協会の直近のデータでも、居酒屋需要はコロナ前の6~7割の水準で推移していてそれ以上は戻っていない。他の外食業態はみなコロナ前を超える回復となっているのに、いわゆる飲み屋需要だけが落ち込んだままなのは、コロナ後のサラリーマン飲み会が大幅に減少、また飲み会をやっても1次会解散が増えたからだというが、このあたりは皆さまも感覚的に理解いただけるだろう。
こうした情勢も、サラリーマン依存度を下げて仲間同士の飲み会中心に移行していた、串カツ田中の追い風となっているようだ。また、冒頭で触れた消費者の厳しい懐事情も串カツ田中には有利に働いている。もともと串1本100円台中心の串カツメニューに、最近では50円(税込55円)の無限ニンニクホルモン串という大ヒット商品もあり、また大きな値上げもせず頑張っている感じも、財布の厳しい今の消費者が選ぶ理由になっている。いまでも平均3000円以下で集まれる場所として支持されているようなのである。
高所得層は外食を増やしている一方で…
今、大企業の賃上げはかなり進んでおり、実質賃金マイナス幅は縮小していると報じられているが、それは平均値の話である。中小零細企業での賃上げは十分ではなく、消費者は二極化していることが明らかになってきた。
図表7は、「家計消費調査」で、外食支出が前年比増えたか減ったか、を所得階層別にみたもの。高所得層は外食を増やしているが、所得の少ない層ではかなり支出を減らしていることが見て取れると思う。直近で支持率が上がっている串カツ田中はこうした環境下で相対的に選ばれやすいチェーンなのであり、今後も最後まで来てもらえる店だとみていいだろう。
今回、串カツ田中をみてきて、この会社がここまで成長したのは、コロナ禍での出店戦略が大きいと感じている。コロナの時、居酒屋などはアルコール提供時間の制限などもあり、売上的にも大きなダメージを受けたことは記憶に新しいと思う。その中で、店舗数を減らさずに維持、拡大したのが、今や居酒屋トップ企業に成長し、海外へも積極進出する鳥貴族と、串カツ田中だった(図表8)。


