「良い医師」の7つの条件

まずは、具体的なお話から入りましょう。患者さんにとって良い医師の条件とは何でしょうか。仲間の医師や、医学部の学生たちとも話し合いながら、理想的な医師の持つ7つの条件を考えてみました。

1つ目の条件は、やはり優れた医療技術です。診断力や治療技術ということですね。あたりまえのことですが、いくら勤勉で人格的に優れている医師でも、内視鏡検査や手術の技術が低いと、患者さんは困ります。

今では、病院などの公式ホームページを見れば、それぞれの医師の得意分野を確認することができます。どういう分野で、診断能力あるいは治療技術が優れているのかという情報ですね。

医師の側からしても、自分に関する情報を広く社会にお知らせするのは義務であり、仕事の重要な一部と言えます。多くのがん拠点病院はこの点に重きを置いて、そうした情報を積極的に発信するようにしています。もしそういったところに情報の少ない医師がいたら、その人は仕事に向きあう姿勢が消極的であるという可能性があります。もちろん、多忙すぎて自分自身についての情報を更新する時間がない場合もありますので、1つの参考条件と考えてください。

「自分の親だったらどうするか」と尋ねてみるのもいい

2つ目の条件は、データや新しい知識に基づいて病状を説明してくれるということです。1人の患者さんにきちんと時間をとって病状説明をする。その時に、データ(特に数字が出てくる)と最新の情報に基づいて話をすることは、きわめて重要なポイントと言えます。

3つ目は、患者さんの話に耳を傾け、しかも質問を受けた際には回答が丁寧で明解であること。つまり、患者さんの尊厳を尊重しているということです。基本的であたりまえのように思えますが、実はなかなかむずかしいことでもあります。

4つ目は、治療の選択肢について、自分の身内に対するのと同じ姿勢で説明してくれるということです。たとえば、「自分の親だったら……」「自分の子どもだったら……」という仮定で、「こういう治療を選択する」というふうに話してくれる医師は、患者にとってとてもありがたい存在です。

患者さんの側は、医師から治療の選択肢を示された時には、「先生ご自身だったら、どれを選ばれますか?」「先生のご両親が患者だったとしたら、どれをすすめますか?」というふうに尋ねてみると良いと思います。その医師の本音を聞くことができます。その際に、そもそも自分の身に引きつけて答えてくれない医師には、用心が必要でしょう。

患者に説明する医師
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