「この後、時間ある? 研修、行かない?」

ただ、生活困窮者と密接に繋がる宗教団体の中には、よからぬことを企む信者が属する新興宗教もある。

以前、同じ広場で炊き出しの列に並んでいたときのこと。60代の男が顔色を窺いながら、複数人に声をかけていた。男は私のところにもやってきた。

新興宗教の下っ端に連れて行かれる生活困窮者たち
筆者撮影
新興宗教の下っ端に連れて行かれる生活困窮者たち

「お兄さん、あまり見ない顔だね。この後、時間ある? 研修、行かない?」「研修って何ですか」「2時間くらい話を聞いて名前を書くだけで1500円もらえるからさ。ほかにも行く人いるから、お兄さんも行こうよ」

彼は埼玉県さいたま市に本部を持つ某新興宗教の「信者」から、使いパシリにされている生活困窮者だった。

彼らは大抵、生活保護を受給していることが多い。声をかけられたのは、このときが初めてではない。新宿、上野、横浜など、各地の炊き出しで彼らの姿を見かける。

信者のポケットマネー1500円が支払われる

実際に、勧誘に応じた人の話をまとめると、次のような展開が待っている。

パシリの男に付いていくと、まずは彼らの雇い主である「信者」の車に乗り、近場の「施設」に連れていかれる。そこで前述したように2時間ほど話を聞き、渡された用紙に名前と住所を記入すると、その新興宗教に入信したことになる。

そして、「信者」のポケットマネーから1500円が支払われる。「信者」は宗教団体から入信数のノルマを課されている。そのノルマを達成したいがために、自腹を切ってでも生活困窮者を入信させているというわけだ。

ちなみに「信者」自身が勧誘していることもあれば、今回のようにパシリに一人あたり500円の紹介料を渡して、入信希望者を集めさせていることもある。

「名前なんて本名じゃなくていい」

「あのー、1500円もらえるのはいいんですけど、そこの信者にはなりたくないです」私に声をかけてきたパシリに聞くと、こう返ってきた。

「名前なんて本名じゃなくていいし、住所もデタラメで大丈夫だから。黙っていれば何も言われないから。少し間を空ければ、何回でも参加してOKだから」

つまり、一人で10回も20回も入信しているケースもあるということだ。1500円の報酬に釣られた生活困窮者たちが、新興宗教の信者の水増しに加担しているのである。