中国の口車に乗る日本企業
2025年2月16日から19日にかけて、経団連、日中経済協会、日本商工会議所の3団体合同の訪中代表団が北京に派遣され、何立峰国務院副総理との会見、国家発展改革委員会や商務部、工業信息化部との会合が開催された。
訪中代表団は経団連の十倉雅和会長、日中経済協会の進藤孝生会長、日本商工会議所の小林健会頭を含む総勢約230人で構成されていた。
経団連は相変わらず、「引き続き中国政府・民間との率直な対話を推進し、相互理解を深め、日中経済協力のさらなる拡大・深化に努めるとともに、日中戦略的互恵関係構築に向けて、経済面から貢献していく」とし、また、「商務部との会合では、王文涛商務部部長から、中国の輸出管理措置は、禁輸措置ではなく、条件を満たせば輸出可能であることが強調された。
また、反スパイ法について、日本企業が中国において合法的な活動を行う限り影響は生じない旨の発言があるなど、各会合において率直かつ広範な議論が展開された」としている。(『週刊 経団連タイムス』2025年3月13日)。
「中国の輸出管理措置」、「反スパイ法」の運用について中国側のアナウンスを文字通り受け取るような能天気者は少なくともトランプ政権内にはいない。
日本の経済界が基本的に中国に対して甘く、希望的観測に立ち過ぎているその理由は何だろうか。その理由の一つには、首脳陣の世代交代があまりにもなされていない、という事情がある。
独裁者・習近平を利してはならぬ
日本の企業人の中には、中国の掲げた改革開放路線当時に中国共産党とともに業績を上げた人たちが多く存在し、なかには代表取締役にまで上り詰めた者もいる。彼らは自分たちがかつて築き上げた中国におけるコネクションを至高の宝としている。
そのために、中国共産党が改革開放路線を捨て、国防動員法・国家情報法・反スパイ法をはじめとする独裁者に奉仕する法律を施行して規制統制路線に舵を切っても方向転換ができずにいる。双循環戦略を都合よく解釈し、脱中国を推進せずに、未だに中国に徒党を組んで出かけて中国共産党と面談し、戦略的互恵関係を確認した、と声明を出す。
次世代の中には中国の方向転換をわかっている人もいるが、わかっているだけであって、改革開放路線当時に活躍した先輩企業人の事情を忖度するあまり、脱中国を推進して中国向けの売上比率を希薄化することは怠っている。
改正反スパイ法が施行され、中国政府による日本人の不当な拘禁のリスクが存在する中国に従業員を駐在させていることについては、おそらく考えずにおこうとしている。
脱中国を推進しないということは、習近平の双循環戦略つまり世界制覇戦略に与するということだ。中国製造2049が実際に達成され、企業が存続危機に直面してしまう時が来るようであれば万死に値する行為を、今の企業経営陣は都合の良い思考停止の下に行っている。



