日本の「中国スパイ」関連組織
アメリカと台湾においては、中国共産党が中央統一戦線工作部を使って行っている政治戦争の性質は、広く一般に理解されている。両政府による非機密情報の公開、メディア報道、学術研究における論文発表が一定程度、機能しているからだ。
ところが日本においては、中国共産党が日本に対して行っている影響力工作の性質およびその手段はあまり明らかになっていない。例えば現時点で、日本国内で機能している中央統一戦線工作部関連組織には次のようなものがあるが、これらの組織と中国人民解放軍が展開している「三戦」との関係を認識・理解している人は多くはないだろう。
※日本中国和平統一促進会
※全日本華僑華人中国平和統一促進会
※全日本華人促進中国平和統一協議会
※中国人民対外友好協会
※中国国際友好交流協会
※友好協会および業界団体(日中友好議員連盟、日本中国友好協会、日本国際貿易促進協会、日中文化交流協会 、日中経済協会、日中協会、日中友好会館)
※孔子学院
そもそも中央統一戦線工作部の歴史は長く、戦前から戦後にかけての国共内戦時代に中国共産党が政治目的のために党外協力者を取り込む方策として組織された。アメリカが緩和政策を採り始める時期と一致するが、1979年、●小平が最高指導者だった時代に再設立され、習近平が国家主席に就いて以降、急激に重要度を増していく。
※「とう」は登におおざと。
日本人が知らない習近平の野望
2015年5月、習近平は「中央統一戦線工作会議」を初開催し、「中国を取り巻く内外情勢はすでに変化した」という認識に基づいて「新しい形勢下の統一戦線工作」を提起し、全党を挙げた統一戦線を指示した。7月に国内各組織の統一戦線工作を主管する中央統一戦線工作領導小組が設置される。
2018年3月、国家組織である国務院僑務弁公室、国務院国家民族事務委員会、国務院国家宗教事務局が、本来は中国共産党の党組織である中央統一戦線工作部の指導下に組み込まれ、これで華人・華僑、少数民族、宗教に関する実務管理も党に一元化されることになった。
2019年10月以降、習近平は「大統戦」の方針を継続して掲げている。大統戦とは「広範で強力な統一戦線の推進」という意味で、党部門である中央統一戦線工作部のみに工作を任せるのではなく統一戦線工作を党全体の重要事業として位置づけ、党の指導強化の下で関連部門間の連携を強化する、という目論見である。
政府および政治家に統一戦線工作に対する警戒心があまりにも小さいのと同様、「中国製造2025」「中国標準2035」「中国製造2049」という中国の産業政策、習近平が2020年を境に打ち出している「双循環戦略」に対してもあまりにも警戒心が小さいのが日本である。

