最低賃金レベルの生活は確保できる

この前提に基づいて、それぞれの年金収入が世間相場でどのくらいの水準に位置しているのかを見ることにします。

最初に「最低賃金」を目安にした比較です。

現在の最低賃金の全国平均「1121円」で週5日フルタイム(8時間)で働くと月収は約18万円です。平均的な会社員である夫が65歳でもらう年金とあまり変わりません。

別にこうなるようにモデルを考えたわけではありませんが、平均的な会社員の年金額がこの水準になるのは実に興味深いことです。働いた場合の「最低保証額」とでも言うべき収入が、ほぼ年金で賄えてしまうからです。

これこそまさに「長生きリスク」を回避する“保険”の機能を「公的年金」が果たしているように見えます。

「総務省の家計調査」との比較ではどうでしょうか。

65歳以上の夫婦高齢者無職世帯の家計支出の全国平均は「月額28万6000円」でした。「専業主婦世帯」の年金収入は約24万1000円ですから、年金額だけでは平均的な家計支出に「月約4万5000円」足りません(妻パート世帯もほぼ同じ傾向です)。

月に約4万5000円ですから、年間では54万円となり、仮にこの夫婦が2人で30年間老後生活を送るとすると、54万円×30年=1620万円となります。

「老後資金2000万円問題」を思い出させるような数字が出てきました。

「ゆとりある老後」には月38万円必要

一方、共働き世帯では夫婦の年金収入は約33万2000円にもなり、家計支出の平均を4万6000円上回ります。

この世代の現役時代は男女の賃金格差が目立つため、女性の年金額は男性と同じ期間働いても少ない傾向がありますが、それを考慮に入れても、2人ともフルタイムの共働き世帯では2人の年金収入で家計の平均支出は賄えてしまいそうです。

「ゆとりある老後生活費」との比較ではどうでしょうか。

生命保険文化センターの調査では「ゆとりある老後生活費」は「月約38万円」ですので、専業主婦世帯の年金収入では「約13万9000円」も足りません。「共働き世帯」でも4万8000円足りませんから、「ゆとりある生活」がいかに高いハードルであるかがわかります(図表1参照)。