■ヘルパーの質だけでなく利用者側にも改善すべき問題点はある
訪問介護サービスは、訪問介護員(ヘルパー)が利用者の自宅を訪問して、食事、入浴、排泄などの介護サービスや調理、洗濯、掃除、買い物、生活に関わる相談などを行っている。
現在、要介護者の44%が訪問介護サービスを利用している状況で、ポピュラーな介護サービスといえる。
サービスはケアプランにしたがって訪問する曜日と時間を細かく計画して提供される。サービス項目は2種類に分かれ、(1) 食事、入浴、排泄などの身体介護は30分単位、(2) 買い物、掃除、洗濯など家事援助のみのサービスは1時間未満単位で計算される。このほか、通院時の介助としてヘルパーの資格を持つ運転手が介護タクシーのサービスを提供することも認められている。
サービス利用料に関して注意すべきポイントは、夜間(午後6時から10時)、早朝(午前6時から8時)は25%、深夜(午後10時から午前6時)は50%が加算されること。このほか、各市区町村で独自に、給食、オムツ支給、布団乾燥などのサービスも実施されているが、これらのサービスは介護保険対象外なので、全額自己負担となる。利用前に確認する必要がある。
ところで、コムスン問題など訪問介護サービス事業者による不正が多発していることは記憶に新しい。その結果、利用者が不利益をこうむる事態に陥ることは許されない。かといって、利用者が受け身でいるだけでは問題は解決しない。ヘルパーの仕事振りが気に入らない、不親切で目にあまる行為がある、どうしても相性が合わないといったケースが起こりうるわけで、そういった場合は泣き寝入りしないで、ヘルパーの変更を要望することができる。ケアマネジャーに相談するか、事業者に直接交渉して、状況を打開する積極的なサービス利用を心がけよう。
利用者側にも問題がないわけではない。ヘルパーに対してまるでお手伝いさんを雇っているような感覚で利用するケースが多発している。料理、洗濯、掃除はあくまで、要介護者のことだけをするのが契約に定められているにもかかわらず、家族が、自分たちの用事も頼んでしまうケースがある。結果的に、家族の要望を断るとサービスの継続利用を断られる可能性もあるので、我慢してサービス提供を行っているヘルパーもいる。
利用者、サービス提供者が、それぞれ立場をわきまえることが必要であるが、介護保険で定められた訪問介護サービスの項目には、庭の花の手入れや芝生の水撒き、ペットの散歩など、解釈の角度を少し変えるだけで要介護者の暮らしを支えることが期待できるものが抜け落ちている。こうしたサービスを今後提供するか否かの議論は、ケアの質を高めていくために必要である。
しかし、問題視されながら取り残されたままになっているのが、最前線で活動するヘルパーの労働条件だ。給与があまりにも低すぎる水準に抑えられたままの状況は、介護の担い手不足を解消する観点からも見逃せない。
そこで、訪問介護を利用する側が、まず心を開いてヘルパーを受け入れることを提案したい。そうすれば、少なくとも介護サービスの利用はソフトランディングできる。賢い介護サービスの使い手になることを考えよう。