資産として保有でき、加齢対応の設備が付いた
マンションが売れている
バリアフリー住宅に、食事の提供や緊急時対応など有料老人ホーム並みのサービスが受けられるシニア向け分譲マンションが人気を呼んでいる。関西圏を中心に開発が進んでおり、長谷工総合研究所の調査によると、2006年には全国で約580戸が供給され、10年には1200戸まで増加することが予想されている。販売からわずかな期間で完売する物件もあり、好調な売れ行きを見せている。
シニア向け分譲マンションの特徴は、加齢に対応した設備とサービスである。バリアフリー仕様はもちろん、物件によっては24時間体制で管理人らが駆け付ける緊急コールボタンを浴室やトイレなどに設置。建物内にはフロントサービスのほか、大浴場や専用のレストラン、娯楽室なども備える。1階にはテナントとして診療所や訪問介護事業所が入っている物件もある。デベロッパーは、さまざまなサービスを付加して、他との違いを打ち出そうと必死なのだ。
購入者の平均年齢は70歳前後。単身世帯が7割以上を占める物件もある。健康面など一人暮らしの不安を抱えていたり、食事の支度が面倒だと思う人が購入しているようだ。防犯に気をつかう戸建てと比べ、マンションは鍵1本で外出できる気軽さもあり、郊外の戸建てから、都市部への住み替えの希望がきっかけになる場合もある。
シニア向け分譲マンションは有料老人ホームへの入居と比較検討される場合も多いが、最大の違いは資産として保有できる点だ。有料老人ホームの多くは「利用権方式」を採用し、入居一時金を払うことにより専用の居室や共用施設を利用できる権利を得る。だが、それらは1代限りで譲渡できない。法的な裏付けがないため、ホームの都合で退去を迫られたり、事業者が倒産した場合に住み続けられないこともありうる。その点、分譲マンションは所有権となるため、退去などの心配もなく、相続や売却、賃貸も可能だ。
ただ、一般のマンションより共有スペースが多い分、購入費用は割高にはなる。月々の管理費や修繕積立金の支払い、固定資産税も忘れてはならない。将来、子どもに相続させてもこれらの費用はかかる。思うように売却できない場合、負担がかさむ場合もあるので注意が必要だ。
将来の介護に備えて住み替えるなら、どの程度まで住み続けられるかも課題だ。要介護になった場合は、自宅にいるのと同じく、介護保険の要介護度認定を受けて、訪問介護などの事業者と契約してサービスを利用する。軽度のうちはそれで対応できても、寝たきりや認知症になったりすると介護施設に移らざるをえない例も出てくる。たとえ、テナントとして訪問介護事業所や診療所が入っていても24時間体制とは限らず、重度化すると費用が高額になる場合もある。
一方、元気なうちから入居できる介護付き有料老人ホームならば、要介護になっても介護棟などで対応してもらえるので住み続けられる。物件によっては、関連の介護施設に住み替えられる条件を設けているところもあるが、終の棲家を探すなら介護付き有料老人ホームのほうがよい場合もある。購入時には介護が必要になったときの対応をしっかり確認しておきたい。