“八雲が女性の容姿を品定めしている”と綴られていた

この記述からは、冨田夫妻が自分たちこそが八雲とセツの結婚を仲介した主役だったと主張したい意図を感じてしまう。「家柄を取り柄に進めてみたら」という表現は、まるで自分たちが積極的に動いて縁談をまとめたかのような書きぶりだ。

なにより、セツへの描写はあまりにも辛辣である。「十人並み」「太っていて」「しとやかではなく」「品位などありません」とは酷い。この時代の歴史資料を読むと刊行物ですら他人の悪口を書いているものを見ることはあるが、これは度を越えている。これは客観的な人物紹介というより、明らかに悪意を含んだ評価だ。なぜ、わざわざこのような否定的な筆致でセツを描く必要があったのか。