月2万~6万円報酬「在宅勤務OK」に惹かれて
神奈川県在住のBさん(62)は、飾り気のないTシャツに身を包む「ザ・お母さん」という雰囲気の女性。彼女が「ネットベンチャーの事務」を求人サイトで見つけたのは、今から10年前のことである。
「『在宅勤務OK』『報酬は月2万〜6万円』という募集文に惹かれて応募しました。当時はまだコロナ前で『リモートワーク』という言葉も普及してない頃です。通勤せずに、月に数万円稼げるなら悪くないと思いました」
その会社のホームページには、さまざまな年齢のスタッフが笑顔でミーティングをする社内風景が掲載されていた。まさに「ITベンチャー」な世界だとBさんは思った。
Bさんが面接に呼ばれたのは、都内のオフィスビルにあるカフェ。細身のジャケットを身に着けた30歳くらいの経営者という男性は、物腰柔らかで感じがいい。
「名前も聞いたことのない会社でしたが、まだ若いのに都心のビルにオフィスを構えるなんて、今の若い人はスゴいなと思いました。これからこういう会社が成長していくのかなと」
「子ども部屋おじさん」2人の合同会社
先が楽しみな会社に50歳を過ぎて採用され、Bさんが胸を躍らせたのも束の間。
「『研修』と言われて指定されたマンションに行ったら、『オフィス』は居間に仏壇やダイニングテーブルのあるただの実家でした。ホームページに掲載されていた写真は完全なイメージカット、面接したビルはカモフラージュだったのです」
「化けの皮が剝がれる」とは、このようなことを言うのだろう。ネット社会では、思わぬものに遭遇することがある。
その会社は「経営者」の男性が友人と二人でアフィリエイトサイトを作ったり、YouTubeの広告などを制作している「合同会社」だった。彼らは会社を起こしながらも実家暮らしをしているという「子ども部屋おじさん」だったのだ。
それでも「在宅ワーク」で働ける環境はBさんにとって魅力的だった。その理由は、Bさん宅の「子ども部屋」の住人である。
Bさんは、もとはバリバリの理系である。
電子関係の専門学校を卒業したBさんは、大手電機メーカーで正社員として働いていた。一人娘を保育園や学童を利用しながら育てるワーママ(ワーキングマザー)だった。

