匂いでマグロを見分ける

それが3億円オーバーの史上最高落札額につながったのだ。

「私は最高額にこだわったわけではないんです。一番マグロじゃなくていい。いちばん美味しいマグロをお客様に提供できればいい。よく宣伝のために高額で落札しているんでしょう、なんて言われますが、それは違う。3億円の翌年の落札価格は1億9320万円でした。競りの現場に行けば、それが良いマグロかどうか、すぐにわかります。

切り落とされたマグロの尻尾の断面を見て、肉質や匂いを確かめるんですよ。身をピッと出して、ちょっとなめたりすれば、柔らかさとか酸味とか脂のノリとか、全部わかる。昔はねえ、腹を割ってたんだ。(手刀を切るように)こうやって脇を少し割って、その少し横っちょに手を入れて、それから尻尾のほうへ、こうグーッと下がってきて、指を入れて。そうすると、美味しくないマグロは血の匂いがするんです。血は巡るから、そういう匂いのするやつは全身が臭くて美味しくないんですよ。私は臭いヤツなんか絶対買いません!」

(松浦 達也/文藝春秋 2025年11月号)
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