社員一人ひとりが「役員と同じ視座」に
特に成果を挙げているのが、会議準備のプロセス変革である。資料構成の設計から文章生成、レビュー修正までをAIが伴走することで、検討漏れ防止や作成時間短縮、会議集中度の向上、意思決定の迅速化といった効果が生まれている。会議当日の質疑応答も事前にシミュレーションされ、議論の流れを想定した準備が可能となった。結果として、DX本部の議論はより戦略的かつ本質的なものへと進化している。
さらに、本部長自身にとっても本エージェントは重要な存在である。トップマネジメントにおける意思決定は往々にして孤独な作業となるが、エージェントはその“横のパートナー”として、課題意識や迷いを言語化し、感情やバイアスを排した意思形成を支援する。すなわち、AIが“トップのメンター”として機能する段階に入ったといえる。
運用にあたっては、数値KPIのみに依存しないことが重視されている。利用率やメッセージ数といった定量指標だけでなく、「現場でどのような変化や新しい行動が生まれたか」という定性成果をストーリーとして記録・共有している点に特徴がある。AIの活用を通じて、業務改善にとどまらず、新規事業や新サービス開発へと発展する「文化的KPI」を設計しているのである。
DX本部長エージェントの本質は、“AIに本部長を模倣させる”ことではない。“本部長の思考様式を組織全体に移植する”ことである。その結果、社員一人ひとりが本部長と同じ視座で考え、行動できるようになる。言い換えれば、エージェントは組織の“第二の知能”として機能し始めている。
思考の共有による「構造的な知の拡張」へ。DX本部長エージェントは、企業が人とAIを融合させながら、自律的に進化する未来の経営の原型を示している。
顧客を理解する「知的パートナー」
2.三井ホーム営業伴走AI:経験を“知の構造”に変える
三井ホームは、東京・千葉・神奈川の3営業所において、AIを営業現場の中心に置く実証を進めている。そのテーマは「セレクト営業伴走AI」。
注文住宅とは違い、セレクト住宅の営業プロセスでは短期間で多くの顧客に提案が求められる。しかし、経験豊富で優秀な営業担当の“勝ち筋”が属人化してしまい、ノウハウが共有されにくいという課題があった。経験差と属人化の壁をどう克服するか。その壁を破るために導入されたのが、エージェント型の「セレクト営業伴走AI」だ。
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