今、世界の多くの国が、日本に支援の手を差し伸べています。その背景には、日本がこれまで培ってきた国際的な信用とともに、日本の技術力に対する期待も大きいと思います。

これまで日本は、「科学技術立国」を標榜し、世界の人々の日々の暮らしを豊かにするための技術を次から次へと生み出してきました。自動車、電化製品、カメラしかり。宇宙開発の分野でも、日本のロケット技術の信頼性は、国際的に非常に高く評価されています。

私が4カ月半滞在した国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」も、打ち上げられて3年以上経ちますが、ほとんど故障もなくきちんと動いています。ハーモニーを貴び、納得のいくまで完成度を高める心、改良に改良を重ね、少しでも良いものにしていこうという、いわば「匠の心」がそれを成さしめているのだと思います。

しかも、その技術を日本だけのものにせず、国際的なプロジェクトに生かしている。例えば、日本が主導して世界15カ国に働きかけ、日本の持つ世界最大級の地球観測衛星「だいち」を、地上の災害のモニタリングや環境問題対策に利用する取り組みを進めています。広い意味での、世界への「思いやり」といっていいかもしれません。

今回、多くの国が日本の震災復興を応援してくれるのは、技術分野においても「日本は世界のために努力してきた」という称賛の表れ。これがあるからこそ、世界が日本を助けようとしてくれているのだと思います。普段はあまり報じられることはありませんが、目には見えない日本の「思いやりの心」を、世界はちゃんと見てくれているんです。

被災された方も、それを支援される皆さんも、世界がうらやむ「思いやりの心」を大切にして復興に努めていただきたい。私も大きな意味での“復興チーム”の一員として、自分にできるところから取り組んでいこうと思います。

(高橋盛男=構成 JAXA=写真提供)