米サウスカロライナ州のハンバーガー店で、25歳のシングルマザーが店舗をたった1人で切り盛りする様子が撮影され、SNSで大きな話題となった。しかし動画が全米に拡散し同情が集まると、店側は彼女を解雇。子育てのための遅刻が理由だったというが、ネット上で非難が殺到している。幸運にも彼女には支援サイトを通じて2000万円を超える寄付が集まったが、働くシングルマザーの厳しい現実を浮き彫りにした――。
バーガーキング
写真=iStock.com/Manuel Milan
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バーガー店員の“ワンオペ”動画が話題に

7月6日、米サウスカロライナ州コロンビアのバーガーキングで、ある光景が撮影された。

店内にいる従業員は、若い女性が1人だけ。夕方のピークタイムにもかかわらず、この女性従業員は調理場とレジを行き来しながら、フライドポテトを揚げ、ハンバーガーを作り、チキンサンドイッチを調理し、注文の袋詰めまですべてを1人でこなしている。

撮影したのは、客としてたまたま店舗を訪れたデジャさん。動画では、「彼女はフライドポテトを作って、バーガーを作って……、全部1人でやっている」と驚いた様子で語り、「誰か助けに入ってあげて」とキャプションで訴えた。

動画はソーシャルメディアで大きな議論を呼び、さらには米有力紙のワシントン・ポスト紙や、NBC系列が全米放送する朝の情報番組『トゥデイ』など、各種メディアが取りあげる事態となった。

ワンオペをこなした女性従業員は、25歳のニキア・ハミルトンさん。調理だけでなく、接客から清掃まですべてを1人で担当していたという。複数の店員で勤務していた時間も含めると、実に12時間以上働き詰めという過酷な状況だった。

この動画はティックトックに投稿されるとすぐに拡散し、視聴者からは店舗への怒りとハミルトンさんへの同情の声が上がった。

1人であらゆる店舗業務をこなした

「従業員の1人が急に辞めてしまい、代わりに来られる人が誰もいなかったんです」と、ハミルトンさん。フォックス系列の地元メディアWACHの取材に応じ、この日の状況を詳しく語った。

「だから1人で働いて、1人で閉店作業もしなければなりませんでした」

彼女が担当した業務は多岐にわたる。「皿洗い、仕込み、床掃除、フロントカウンター、ドライブスルー」のすべてを1人でこなさなければならなかった。

同メディアによると、彼女は普段から12時間以上のシフトをこなしている。3人の子どもを養うためには、どんなに過酷でも働き続けるしかなかったという。

WACHが取材に訪れた前日も、ハミルトンさんは再び1人で閉店作業を行っていた。「昨夜もまた1人で店舗をクローズしました。今日になって、やっとヘルプが来たんです。(朝の)11時から閉店の11時まで働いてくれます」と話す。一方で、「従業員がいないんです。もう誰も働きたがらない」と人手不足の深刻さを訴えた。

カナダのCTVニュースによると、ハミルトンさんが1人で店舗を運営していた時間は、3時間ほどだったという。バーガーキングは、複数の従業員でシフトを組む方針に反していたことを認めた。

動画がメディアで話題になると、バーガーキングは声明を発表。同社は「すべての直営店およびフランチャイズ店において、シフトごとに複数の従業員が勤務することを方針としている」と述べ、今回の事態を調査し必要な対応を取ると約束した。