結局、人間はお金のためだけに仕事しているのではなく、「働く意義」などそれ以外の部分がインセンティブとして大きいので、そこに訴えかけるような仕組みを考える必要があります。
経営理念やミッション、企業文化の共有で経営者と従業員が目指すべき目標を一致させることができれば、多様な人々を束ねることができるようになるでしょう。例えば多様な人材が活躍するグーグルでは“Ten things we know to be true”と題した価値観を示し、それに向かってやっていこうと考え方の共有を図っています。
旧来の日本企業は理念や考え方を言葉にしなくても共有できる方法を持っていました。それは新卒一括採用した人々が何十年も同じ釜の飯を食うことです。終身雇用的な世界のなかで同質化し、阿吽の呼吸が通じることはある意味、日本企業の強みでした。
しかし企業の内部が多様化すれば、阿吽の呼吸など不可能です。経営者は今日入社した人が明日には会社の理念やミッションを共有できるようにして、そこに向かって頑張る一体感をつくることが非常に重要な仕事になります。
一方、個人には際立った特徴が求められるようになるでしょう。重要なことは自分の専門性やキャリアにおいて、他人とは違うキラリと光る何かがあるかどうか。職業人生のなかで際立った特徴をつくることができれば労働市場において交渉力が高まり、よりよい機会や条件を求めて会社を移動できる可能性も高まります。
それは会社に言われた通り何でもやるかわりに安定性を得るという、ある意味奴隷的な働き方ではなく、自分の意思によって自分の特徴をつくりだす働き方へのシフトを意味します。他人が自分の人生を決めるのではなく、いろいろ大変なことはあっても自分の人生を決めるのは自分である。そんな確信を持ち、ポジティブに未来を切り開く生き方が当たり前の時代になっていくのです。