母親が「心のよりどころ」になっている
本稿では『Z家族』というタイトル通り、近年変化した親の姿について分析していきます。
さまざまな人間関係のなかで、家族――特に母親が若者にとって最も信頼できる、心を開ける存在になってきたわけですが、実は母親の役割はそれだけではないこともデータから読み解くことができます。
Z世代は母親を母艦のように「心のよりどころ」とするだけでなく、灯台のように「道しるべ」にもしているのです。
たとえば「母親のアドバイス通りに行動することが多い」に対する数値は、51.5%→68.0%と増加。今や7割近い子どもが母親を頼り、教えてもらったことを素直に行動に移しています。
なぜ、このような母親のポジション変化が起こったのでしょうか。
これは、母親がかつての「家を支えてくれる存在」から「尊敬に値する存在」へと変化してきたことが影響しているようです。
知識もスキルもある「できるママ」
かつては、母親は大学受験や資格受験を経験していなかったり、就労経験が少なかったりと、父親に比べて社会から遠く、ロールモデルや人生のアドバイザーとしての役割を担いづらい側面もありました。
しかし現在では、女性が男性と同じように学歴社会を歩み、社会のなかで実績を積んでいるケースも増えています。「母親が子どもの勉学やキャリアに関わるようになった」というより、「関わることができるようになった」といえるでしょう。
特にZ世代は、共働き家庭が増えるなかで「働く母の背中」を見て育ってきた世代でもあります。
「末子が15〜17歳の母親」の就業状況を見ると、2002年時点ではフルタイムで働く母親は23.8%でしたが、2019年では約5ポイント増加。4人に1人以上がフルタイム勤務となっています。
パートタイム勤務の母親も、以前は3人に1人ほどだったのが45.5%にまで上昇。そしていわゆる専業主婦、区分すると「非就業」の母親の割合は2002年には約3分の1を占めていたのが、2019年では2割を下回る水準にまで減少しています。
母親がさまざまな経験をしているからこそ、具体的かつ説得力のあるアドバイスができる。子どもから見ても、知識もスキルも持ち合わせている、頼れる「できるママ」が増えているのでしょう。



