知られていないが、自転車の飲酒運転も法律違反だ。また傘をさしながら、携帯を操作しながらなどの「ながら運転」も同様。
以上は刑事事件としてとらえた場合。次に民事事件としての側面も説明しよう。
相手にケガなどの損害を与えた場合は、当然、損害賠償責任(民法709条・不法行為)が生じる。交通事故の場合、「過失割合」といって「どちらにより落ち度があったか」で、自転車の修理代、ケガの治療代など賠償金額や慰謝料が変わる。
上の設問の場合は自転車が違反だらけなので、歩行者の信号無視などの過失がない限り、ほぼ10対0で自転車側の過失となるだろう。事故後すぐに救急車を呼ばなかったりウソをつくなどの不誠実な態度が明らかになれば、慰謝料はさらに加算される。
問題は相手が死亡してしまった場合だ。遺族はあなたに逸失利益として「年5%で運用し続けると、被害者が生きていれば得られた」であろう額を請求できる(ライプニッツ係数に基づく計算)。もし年収が1000万円の人なら、逸失利益を含めた賠償額は1億円を超える場合がある。扶養家族がいれば、慰謝料がさらに加算される。
また、重度障害が残った場合は、一生その介護費用などを負担しなければならないわけだから、賠償額は1億~2億円に及ぶ。
このような事態を招かないためには、保険に加入しておくことだ。自転車には自賠責保険のように強制加入の保険はないが、自転車安全整備士の整備した「TSマーク」付き自転車を購入すると、賠償責任保険と傷害保険に加入できる。しかし、補償限度額は、相手が死亡したときでも最大2000万円。やはり「自転車も車両」と肝に銘じ、安全運転を心がけることだ。
※すべて雑誌掲載当時
(構成=村上敬)