兵庫県姫路市は、姫路城の入城料について、市民と市民以外で分ける「二重価格」を2026年3月から導入する方針だ。歴史評論家の香原斗志さんは「日本人と外国人とで入城料に差をつけたほうが、公平感が増し、無用な外国人批判を生まずに済むのではないか」という――。
入城料「市民1000円、市民以外2500円」の残念さ
姫路城はほかの城とスケールが違う。大天守を単体で見て、高さ、総床面積ともに現存する12天守で最大だが、この城にはほかにも数多くの建造物が残っている。大天守のほか乾小天守、西小天守、東小天守と、それらを結ぶ4つの渡櫓の計8棟は国宝に指定されている。ほかにも櫓と渡櫓27棟、門15棟、土塀31棟、築地塀1棟の計74棟が国の重要文化財に指定されている。
このため、維持管理や保存のためにかかる費用も、ほかの城とはけた違いだ。姫路市によると、2015年度からの10年間で維持管理や保存修理に要した費用は約145億円。人件費や資材費の高騰を受け、2025年からの10年間では、これが約280億円に膨らむと試算されている。
これらの費用は主として入城料収入で賄われているが、その収入は年間約11億円にとどまっており(2023年度)、今後はそれだけではとても維持管理しきれない。そこで姫路市は今年3月、値上げを発表した。現在は一律1000円の入城料を、2026年3月から市民と市民以外に分け、市民は1000円に据え置く一方、市民以外は2500円にするという。
しかし、当初は清元秀泰市長が、日本人と外国人の二重価格にするという意向を示しながら、実現しなかった。私はとても残念に思う。誤解がないように述べておくと、「残念」なのは「日本人ファースト」の考え方によるものではない。むしろ、日本人と外国人とで入城料に差をつけたほうが、負担の公平感が増し、外国人への無用な敵愾心を生まずに済むと思うからである。

