参院選は予想通り自民党の勝利で終わったが、このところ目立っているのが自民党のマスコミに対する強硬姿勢だ。
「電気事業法改正法案の廃案について6月26日のTBS『ニュース23』が“自民党にやる気がなかったから”という識者コメントを放送。激怒した自民党が党幹部への取材や番組出演を拒否して話題になりましたが、ほかにも時事通信社主催のインターネット討論会が自民党の怒りを買い、討論会当日になって突如中止になっています。自民党の勝利で、マスコミへの圧力が強まる恐れがあります」
全国紙政治部デスクはそう危惧する。
ネット討論会は、7月11日から15日にかけて三重、愛媛、滋賀、岩手の各選挙区で予定されていたが一転中止に。これについて民主党の細野豪志幹事長は記者団に「討論会が突然中止になったので大変驚いた。自民党がキャンセルしたのは異常なこと」と話し、自民党への不満をあらわにした。
「自民党の候補者が出席を拒否したことで企画じたいが中止に追い込まれた。滋賀県などでもほぼ同時に中止になった。自民党に再考してもらいたい」
記者団が「TBSへの取材拒否とつながるのでは?」と質問すると、細野氏は、自民党と時事通信社間の文書に「時事通信側が悪いんだと書かれていた」「時事通信はなぜ自民党をかばうのか。TBSのときも感じたが、自民党の圧力にメディアがへなへなと腰砕けになっている姿は問題だ」とメディアの弱腰に言及した。
実際はどうだったのか。時事通信関係者が舞台裏を説明する。
「討論会の企画は博報堂が時事通信の業務局に持ち込んだもので、政治取材担当の編集局に事前に相談がなかった。自民党が問題視したのは討論会の司会役の人選。民主党の菅直人政権の広報担当内閣審議官を務めた下村健一氏らが司会の予定でした。これに自民党が“公平性に欠ける”とかみつき候補者の出席を拒否した。菅氏の側近ともいえる人物の司会はまずかった。事前に編集局に相談していれば避けられたトラブルでした」
だが細野氏は「違う司会者でやれば済むこと。企画潰しが目的」と主張した。TBS問題は、TBS側が「今後一層公平、公正に報道していく」とする報道局長名の文書を提出。自民党が取材拒否を解除した。権力につけ込まれないよう、報道側には細心の注意が必要だろう。