「手本を見せず丸投げ」はダメ

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『産業看護 2012 Vol.4 No.4』(メディカ出版)島津明人「職場のメンタルヘルスと個人・組織の活性化――ワーク・エンゲイジメントの視点から」より編集部作成。

前回(http://president.jp/articles/-/10021)、ワーク・エンゲイジメントの高い人はストレスが低くなる一方、仕事の満足度やパフォーマンスは向上すると述べました。では、ワーク・エンゲイジメントを高めるにはどうすればよいか。それには二つの資源を豊かにすることが大切です。すなわち、個人の内部にある「個人の資源」と、仕事や職場、組織に関連する「仕事の資源」。これらを高めることがワーク・エンゲイジメントを高めるカギになります。

個人の資源としては自己効力感や楽観主義、レジリエンス(困難な状況でも適応できる力)などが、仕事の資源には仕事の裁量権や職場のよい雰囲気、仕事で成長できる機会などが挙げられます。あなたが部下を持つ上司であれば、これらの資源を高めることが部門やチームの活性化につながっていきます。

自己効力感を提唱した心理学者、アルバート・バンデューラは「自己効力感を高めるためのいくつかの源泉が存在する」と指摘しており、その中の一つに「よいモデルを見ること」があります。よいモデルが存在しないと「あんな風に仕事をするとこんな成果が得られる」という先行きが見えず、不安になってやる気が起きず自信も持てないという結果に陥ってしまうのです。その意味で、部下に手本を見せず仕事を丸投げするようでは、よい上司とは言えません。

「なぜこの仕事を任せるのか」をしっかり部下に伝えることや成功体験を積ませること、ポジティブなフィードバックを与えることも自己効力感の向上に寄与します。