台風19号の豪雨被害を報じるテレビ番組で「上流を氾濫させて下流を守るという考えもある」と指摘し、猛批判を浴びた橋下徹氏。大阪府知事として治水の難事業に挑んだ経験を持つ橋下氏が、発言の真意を解説する。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(10月22日配信)から抜粋記事をお届けします。
写真=時事通信フォト
側溝だけが残された千曲川堤防の決壊箇所付近の道路=2019年10月14日午後、長野市の穂保地区

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八ッ場ダムは本当にきっちりと機能したのか?

政府与党は、利根川水系につくられた八ッ場ダムに関して、台風19号の豪雨に対してきっちりと機能していたと言い張った。2009年の政権交代時に八ッ場ダムの建設を中止にすると宣言した旧民主党系の野党各党は、歯切れが悪い。野党各党は、八ッ場ダムがたまたま試験湛水で水を抜いていた状態で、水を貯める能力が通常よりも過大だった可能性を指摘すればよかったのに、それをしない。勉強不足なのかなんなのか。

今回、満水に至って緊急放流したダムが6カ所あり、その他のダムでも緊急放流にまでは至らなかったが満水の恐れがあったものが多数あったと聞く。これらのダムは事前放流(水を抜く)が十分にできずに、水を貯める力の限界に達していたということだ。