就活で人気といわれる体育会学生。売り手市場も相まって、引く手あまたかと思いきや、企業が求めるのはその一部だという。同じ体育会学生でも、どこで線が引かれるのかを検証した。

体育会なら誰でもOKの時代ではない

就職市場では古くから「体育会系学生は就職に強い」と唱えられてきた。企業が評価するのは、練習で養われた体力、物怖じしないメンタルの強さ、指示に従う従順さなど。さらに先輩・後輩・同期と縦横のネットワークを持ち、「顧客を引っ張ってくる」側面も一部の企業には魅力で、今も証券や不動産の営業といった職種に根強い人気があるという。

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しかし、採用コンサルタントの谷出正直氏は、「体育会なら誰でも欲しいという時代は終わりました」と指摘する。

「根性のある体育会人材も需要はありますが、今、大企業の人事部が求めているのは、地頭のいい体育会です。つまりスポーツ推薦やAO入試など、入学時に学力を免除された学生ではなく、一般入試で入学している学生。体力やメンタルの強さに加えて、体育会での経験をビジネスに変換する能力があるからです」

さらに人事部は、体育会で培ったどんな資質に注目するのか。体育会人材の就職支援サービスを展開するスポーツフィールド社長室室長の久保谷友哉氏は、「積極性」を挙げる。

「体育会出身者は、こうしたい、こうすべきという自分の意見をストレートに言えるタイプが多い。提案をプッシュし続けて実現させる突破力は、企業に高く評価されます」

谷出氏が着目するのは、「組織調整力」だ。

「チームワークの重要性を、理論ではなく経験で知っているのが体育会の強みです。自分がどのポジションでどう動けば、チームの能力を最大限に発揮できるか、と考える癖が彼らにはついている。状況によってはサポートメンバーになることも厭わない利他的な発想は、体育会の経験があってこそ生まれるものでしょう」

また、華々しい戦績があるにこしたことはないが、たとえ4年間レギュラーでなくても、人事部が評価するケースも多い。成果を出すために目標を設定して、コツコツ取り組んできた学生は、「上に言われたままにやったら結果が出た」という学生よりも興味を持たれるのだ。