スポーツでも商売でも「アウエー」の戦いは苦しいものだ。しかし、ビジネスの世界では、ホームが必ずしも有利ではない場合もある。相手との関係、話の内容によって「交渉の場所」は慎重に吟味しよう。

交渉においては、「ホームか、アウエーか」という問いの答えはけっして自動的に出てくるものではない。答えを出すためには、その交渉についてしっかり研究することが必要だ。同じ都市にある会社同士が交渉する場合には、どちらの会社のオフィスがその交渉に最適の場所かを決めなければならない。異なる地域や国の会社が交渉する場合には、多額の旅費が必要となるため、どこで交渉するかはさらに重要な問題になる。

交渉場所を決めるにあたっては、基本的に4つの選択肢がある。自分のところ、相手のところ、どこか別の場所(中立地帯)、まったく顔を合わせない(電話やコンピュータを使う)の4つである。それぞれの選択肢の利点と難点を検討してみよう。

(1)ホームで交渉する

スポーツ選手がホームグラウンドの利を望むように、ほとんどの人が自分のテリトリーで交渉することを望む。自分の会社で交渉することには、いくつもの明白な利点がある。第一に、あなたは交渉環境を熟知しているという強みを持つことになる。電話やトイレから信頼できる秘書の部屋や内密の相談をするための安全な区域まで、あらゆるものがどこにあるかを知っている。それに対し相手は、勝手がわからないだけでなく、カルチャー・ショックを起こすこともある。外国での交渉の場合は慣れない食事や慣習、言葉に対処しなければならないからだ。

ホームグラウンドで交渉すれば、会議室の選定やセッティング、交渉テーブルでの座席の配置、もてなしや社交行事の内容やタイミングなど、環境をコントロールすることもできる。ホームグラウンドの利を持つ交渉者は、たいていこの特権を利用する。

ホスト側になることで、あなたは自社の資源を相手に印象づけるチャンスを手にすることになる。さらに、なじみの専門家にアドバイスを求めたり、上司に相談したり承認をもらったりすることもたやすくできる。相手側が特殊な支払い条件を要求してきても、目と鼻の先にいる財務担当役員からすぐに「イエス」か「ノー」かの返事をもらうことができる。また、財務部を説得する場合でも、電話やメールでやりとりするよりもはるかに説得しやすい。

おまけに、ホームグラウンドで交渉すれば旅費はかからないし、時間も節約できるので安くつく。ホスト側が通常、交渉に参加するかたわら他の仕事にも対応できるのに対し、ビジター側はそうはいかない。ホームで交渉すれば、家族や友人や日々の業務から離れていることからくるプレッシャーも感じずにすむ。長く離れていればいるほど、合意してホームに帰りたいという気持ちがどうしても強くなるものだ。これらの理由から、ビジター側は、早く交渉をまとめるか、打ち切るかすることになりがちで、これは概して彼らに不利になる。