METHOD 1 子供が学校から帰ってきたら、「今日楽しかったこと」を聞く

「ほんのちょっとしたことでもいいので、毎日、楽しかったことや、感謝したいことを思い出し、書き出すというワークをすることが、シャハーが最初にハーバードの学生に提案した“宿題”です」(成瀬氏)

成瀬氏によれば、このワークを小学生がするとき、書く内容はごく身近なものでよいという。「両親」や「学校・塾の先生」「友達」……思い浮かんだ人や出来事を話してもらう。最初のうちは、書かずに話すだけでもよいそうだ。

重要なのは、思い出しているときにその人や出来事を目の前に思い浮かべたり、話したり書いたりしながら感謝の気持ちを心のなかで再体験することだ。

シャハー氏がなぜ学生にこのワークを勧めたのか。それは、心理学者のロバート・エモンズとマイケル・ロッカーの実験研究に目をとめたからだった。

彼らの研究によれば、毎日1~2分、感謝する時間を設けたグループは、何もしなかったグループに比べ、「人生をもっと肯定的に評価できるようになった」という。幸福感が高まり、ポジティブな気分を味わえるようになったというのだ。さらに、人に対しても優しく、手伝いを積極的に申し出るようになっただけでなく、よく眠れるようになり、よく運動をするようになり、身体的な不調も激減したという。

家庭でするときのポイントは、子供に聞いたあとに子供から自分に対してまったく同じ質問をさせる、ということだ。

「親子それぞれが、『ありがとう』と言いたいこと、面白いと感じたことを話し合う。こうした習慣を1日のうちほんの数分でも続けられれば、いろいろな人・ことに助けられていることを実感できるんです。このワークは、子供の感情を理解し、安定させるツールにもなります。慣れないうちは、週に1回程度でも効果があるので、ぜひやってみてください」(成瀬氏)

その日の学校での出来事や友人とのやりとりなど記憶をさかのぼる作業は、最初はうまくいかないかもしれないが、親子で継続していれば、次第にコツがつかめてくる、と成瀬氏は言う。