――これまでホールセールは弱点と指摘されてきた。経済が活性化してくれば、企業の増資、M&AやIPO(新規株式公開)のニーズも出てくる。

【久保】いうまでもなく法人部門も人員を増やして強化していく。株高、債券高を受けて、企業は新株や社債の発行に前向きになるはず。また、海外の機関投資家からの問い合わせも多い。いま儲けられるのは日本株という判断からだろう。そうした多様な注文への対応やリスク管理のために約500億円のシステム投資もしていく考えだ。

私どもは、個人も法人も両方ともに強い「総合証券会社」を目指してきた。リテールは、日興証券95年の長い歴史があり、非常に大きな車輪を持つ。ホールセールも3年半前から海外市場を含めて、その車輪を大きくする努力を続けてきた。この両輪のバランスをよくしていこうと思っている。

ただ、会社を取り巻く環境は常に変化しており、不況だからといって悲観し、好況だからと浮かれてはいけない。その意味で、私は新入社員に「鳥の目、虫の目、魚の目」を持てと話した。空から俯瞰しながらも、足元もしっかりと見つめる。魚眼は潮流を読むということである。人を育てながら、グループ経営の一層の強化を図っていきたい。

SMBC日興証券社長 久保哲也
1953年、鹿児島県生まれ。76年、京都大学法学部卒。住友銀行(現三井住友銀行)入行。執行役員、常務執行役員を経て、2008年、三井住友フィナンシャルグループ常務執行役員。11年、三井住友銀行副頭取、三井住友FG副社長執行役員、SMBC日興証券取締役。13年4月より現職。
(鈴木直人=撮影)
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