抜本的な対策が必要

24年の初めから、為替レートは急激に円安になった。これによって外国人旅行客数が増えたのだ。ただし、コロナ以前の1ドル=110円程度の為替レートでも、外国人観光客は多く、オーバーツーリズムが問題となっていた。

したがって、今後仮に本格的な円高への転換が進むとしても、それだけで問題が解決できるとは思えない。オーバーツーリズム、なかんずく外国人旅行客による日本の公共インフラの使用問題について、抜本的な対策を講じることが必要だ。

公衆トイレなどの公共的な施設の設置と維持には、コストがかかる。その負担は、日本人が負っている。そして、外国人旅行客は、負担なしでそれらの施設を使っている。

地域住民の税金でまかなわれている社会基盤が、外国人観光客によって過剰に利用されているのだ。いわば、「ただ乗りの利用」を認めていることになる。

その反面で、サービス供給の費用を負担している日本人が使えなくなる。こうした費用を、民間の営業主体であるコンビニが負担するのは、さらにおかしい。

だから特別な税を作って外国人旅行客に課税し、それを公共施設の設置と維持のための財源とすることが必要だ。トイレの場合について言えば、コンビニが対応するのではなく、公衆トイレを増設するのだ。

一石二鳥の観光税

オーバーツーリズムの問題に悩んでいるのは、日本だけではない。そして、それへの対策として、世界のいくつかの都市や地域で、「観光税」が導入、あるいは検討されている。これは、宿泊料金や航空運賃に上乗せする形で徴収される。

現在、世界の約60カ国や地域で観光税が導入されている。ベネチアの入島税やバルセロナの観光税はよく知られている。

観光客であふれるイタリア・ヴェネツィアのドゥカーレ宮殿
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日本では、2019年以降、日本から出国する旅客から、出国1回につき1000円を「国際観光旅客税(出国税)」として徴収している。航空会社がチケット代金に上乗せして、国に納付する。

国税庁の説明によれば、これは、「観光先進国実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図るための恒久的な財源を確保するため」のものだ。沖縄県は、2026年度をめどに観光税を導入する考えを示している。

日本でも、主要な大都市では「宿泊税」を導入している。京都市は、2026年をめどに宿泊税を引き上げる方針だ。

これらとは別に、以上で述べたような対策の費用に充てるための財源として、「観光税」を創設することが考えられる。それは、単に、公共サービスの対価というだけのものではない。来日することのコストを高め、質の低い旅行者をカットするという意味もある。つまり、これによって質の高い旅行者を選別するのだ。

なお、大阪府の吉村洋文知事は、24年の3月6日、外国人観光客に対して、「宿泊税」以外に、観光資源の保護などを目的に負担してもらう「徴収金」の導入の可否を検討する意向を表明した。